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ラ・サール高校(鹿児島県)の谷口哲生副校長は「かつては東大志向が強かったが、官僚・法曹人気の低迷で、医学部志向にシフトした。今は1学年約220人のうち100人前後が医学部に進む。生徒は地元の鹿児島、福岡に次いで東京出身者が多いが、大半が医学部志望者だ」と語る。ラ・サールと久留米大学付設高校(福岡県)、青雲高校(長崎県)は九州の「私立御三家」と言われるが、いずれも「医学部第一主義」で、九州大学などの国立大医学部の合格にしのぎを削っている。

埼玉県立浦和高校では医学部志望者が少なくない

埼玉県立浦和高校では医学部志望者が少なくない

医師の偏在解消は地域の大きな課題だ。少子高齢化の進むなか、医療費抑制のため政府は医学部の新設には慎重だった。1980年以降、新設を認めなかったが、東日本大震災の復興支援のため、2016年に東北医科薬科大学(宮城県)医学部が開設された。続いて国家戦略特区により、17年に国際医療福祉大学(千葉県)に医学部ができた。ともに私立医大だが、東日本で相次いで医学部が誕生したわけだ。

埼玉県で順天堂大学医学部付属病院の建設計画が浮上

医師不足に悩む埼玉県でもこれまで、医学部新設や大学病院の誘致に奔走してきた。県議会では「埼玉県立大学の医学部新設案や早稲田大学の医学部構想も議論に上った」(県幹部)。そんな中、さいたま市に順天堂大学医学部が800床の付属病院を建設する計画が浮上した。この計画を担うのは「神の手」と呼ばれた心臓外科医で、順天堂医院(東京都)院長を務めた天野篤特任教授だ。「浦和高の出身で、同高の生徒などを対象にした手術室体験授業に協力するなど母校愛も強い」(杉山校長)。地元の出身者や自治体が一丸となって計画を進めるが、開業は当初計画から大幅に遅れる見込みだ。

コロナ禍で大学病院の運営は一段と厳しくなっている。一人前の医師を育てるには億円単位のコストと時間がかかるとされる。医学部で6年間学ぶほか、医師免許を取得しても初期研修に2年間、後期研修に3年間と計5年間の研修期間がある。これらを経てやっと専門医などの道が開ける。医師の地域偏在を是正するのは容易ではない。

(代慶達也)

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