ファンダムエコノミーとは? 新たな経済社会考える視点
青山ブックセンター本店
ビジネス書・今週の平台生産者と消費者の関係変える
重要な指摘の1つは「ファンダムエコノミーは生産者と消費者の関係性を根底から変える」という点だ。冒頭の対談で若林氏はこう指摘する。「K-POPにおいて『ファン』は受け取るだけの静的な『消費者』ではなく、身銭を切って推しの広報をしグッズや動画や字幕をつくったりする『行動』を起こす人たちと考えられている」。ファンダムエコノミーの消費者は生産にも参加し、新たなビジネスを生み出したりするのだ。日本のコミケなどに見られる二次創作もそうした参加の1つだ。
こうしたファンダムエコノミーの特性がもたらすビジネスの変化とは何か。本書を読んでもひと言で言い切れはしないが、そのヒントはたくさんちりばめられている。「ファンダムの経済圏を見てみますと、当然そこには貨幣経済もあるのですが、むしろ大事なのは『評判経済』(レピュテーションエコノミー)だといわれています」(岡部大介氏)といった指摘などは、ファンダムエコノミーが引き起こすビジネスの変化を考える重要な起点になるだろう。
「編集に関わっている若林氏はこの店に来るビジネスパーソンに人気の著者・編集者の一人。このため入荷直後からよく売れて、そのままランキングトップになった。クリエーター系の来店客が多いだけに関心が高いテーマだったようだ」とビジネス書を担当する本田翔也さんは話す。
上位の大半は息の長い売れ筋
それでは先週のランキングを見ていこう。
1位は紹介したファンダムエコノミーの本。この1位こそ入荷したばかりの新刊だが、2~5位はいずれも息の長い売れ筋で、刊行1カ月以内の新刊は顔を出していない。2位は21年2月に本欄の記事「ビジネスに通ずる クリエイティブ発想の本質を明かす」で紹介した本で、この店では息長く上位で売れている。次世代のマーケティングを考察した3位の本も21年11月刊で、2月に本欄の記事「次世代のマーケティング像 世界の事例を読み解き探る」で紹介した。
4位は元テレビ東京の名物プロデューサーが自らの仕事術を語った本。発売以来2カ月あまり売れ筋上位が続く。5位の本はマーケティング支援ビジネスを手がける著者2人がトップマーケターの思考と行動を50パターンに分けて解説した内容。こちらも21年秋の刊行で、息の長い売れ筋になっている。
(水柿武志)