35歳からの初めての転職 後悔防ぐ7つの鉄則<後編>
ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行
次世代リーダーの転職学(7)まずは見る、聞く、学ぶ。素直に適応すべきだった
「Mさんはいつも会議で『前職ではこうしていた』と言う話をされますが、ちょっとあれは控えていただいたほうがいいかもしれません」。
成長中のインターネット広告代理店のコンテンツ制作部門で編集マネジャーとして働くMさん(42歳)が、つい先日、上司の事業部長との1on1面談の場で、さりげなく注意を受けたそうです。Mさんは、6カ月前に大手新聞社から転職してきた中途採用組なのですが、40代を超えた中途採用は珍しく、かついきなり部下を持つ管理職として迎えられたのも異例で、迎え入れる段階でMさんへの会社側の期待値が高かったことがうかがえます。
しかし、新聞記者として20年の経験を積み、"自分はコンテンツのプロフェッショナルとして若手の多い転職先に貢献しなければ"という熱い気持ちが先走ってしまい、無意識のうちに「プロとしての心構え」や「新聞社のやり方」を部下たちに強要するところがあったようです。次第に部下たちの心は離れ、次世代のエースと言われていたデスクが休職したり、重大なミスが続いたり、組織としての求心力が落ちていることは明らかでした。
「気持ちの焦りもあってやり過ぎてしまいました。"郷に入れば郷に従え"という原則を忘れて、つい前職のプライドを押し付けていました。うまく行くかどうかはわかりませんが、もう一度信頼関係を築けるよういちから出直します」(Mさん)。
転職の後悔を防ぐ7つの鉄則
前回に引き続いてお届けした「初めての転職でありがちな後悔」のケーススタディ。いかがでしたでしょうか。ぜひ皆さんにとっての"転ばぬ先のつえ"として活用いただけると幸いです。
最後にもう一度、転職で後悔しないための7つの原則をおさらいしておきます。
(2)「もっといい求人があるかもしれない」軸を決めずに待ちすぎない
(3)職場のリアルを事前に徹底確認しておく
(4)退職理由の裏返しで転職先を選ばない
(5)業界・職種の将来性を長期的視点で予測する
(6)転職では「異文化への適応」が問われると心得よ
(7)見る、聞く、学ぶ。はじめの一歩は「郷に入れば郷に従う」
就職してから1社目の在籍年数が長ければ長いほど、外の世界が見えなくなるのは避けられないことです。自分が当たり前だと感じている働き方は、170万社ある企業の中のたった1社の常識でしかありません。何らかの事情で転職をすることになった場合には、その前提を乗り越えて、いかに自分が自分らしく働いていけるか、そのチャンスをうまく見つけ、そして生かしていただきたいと思います。
※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。
