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米国の控訴裁判所では無作為に選ばれた裁判官からなる合議体で審理を行う。無作為ゆえ、男性だけで審理を行うこともあれば、女性裁判官とともに審理を行うこともある。

研究によると、合議体での女性比率が10%高まると、その後の調査官(ロー・クラーク)採用で、男性裁判官が女性を選ぶ確率が7ポイント高まることがわかった[注3]。この調査官という役職は、ロースクールのトップ校出身者が選ばれることが多く、将来の弁護士や裁判官としてのキャリアにつながる、いわば登竜門だ。

背景には3つの理由が考えられる。1つ目は女性裁判官と働くことで、女性の能力や素質に対する懐疑的な見方が減るというものだ。2つ目は、部下の性別構成に気を付けるようになるというもの。3つ目は、同僚の女性裁判官の人脈を通じて、有望な女性候補者を見つけやすくなるというものだ。詳しい分析によると、1つ目の偏見の解消が最も重要な要因だそうだ。

要職に女性をつけることは、組織に新しい発想と価値観をもたらす。加えて、次世代の女性幹部養成にもつながる投資としての側面があるのだ。

※出典 [注1]令和4年4月、内閣府男女共同参画局、「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」
[注2]東京商工リサーチ、2021年7月、「上場企業2220社 2021年3月期決算『女性役員比率』調査」
[注3]Marco Battaglini, Jorgen Harris, and Eleonora Patacchini, "Interactions with Powerful Female Colleagues Promote Diversity in Hiring", forthcoming in Journal of Labor Economics.
山口慎太郎
東京大学経済学研究科教授。内閣府・男女共同参画会議議員も務める。慶応義塾大学商学部卒、米ウィスコンシン大学経済学博士号(PhD)取得。カナダ・マクマスター大学准教授などを経て、2019年より現職。専門は労働市場を分析する「労働経済学」と、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」。著書『「家族の幸せ」の経済学』で第41回サントリー学芸賞受賞。近著に『子育て支援の経済学』。
[日本経済新聞朝刊2022年5月23日付]

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