アートで障害者を幸せに 20歳起業家、最適解を模索中
エラフルー代表取締役CEO 山本亮輔さん
チャレンジャー
エラフルー代表取締役CEOの山本亮輔さん
「重度障害者とその周囲の人たちを幸せにしたい」と起業を志した若者がいる。慶応義塾大学2年生の山本亮輔さん(20)だ。障害者領域を重度からのボトムアップで転換する、という思いを込めた会社名は「エラフルー」(横浜市)。welfare(福祉)を逆さから読んだものだ。特別支援学校に通う重度障害児向けの絵画教室やアートイベントの企画運営を手掛け、子どもたちが描いた作品を社会に発信している。
タイミーでビジネスのイロハ学ぶ
そもそも自己実現の方法に「起業」という選択肢があることを知ったのは、慶応高1年の15歳の時。フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグが億万長者に成り上がっていく様子を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」を見て、触発された。「自分もこんな風にコーディングができるようになって、自分の手ででかいサービスを作りたい」
大学は内部進学が決まっていたため、時間には余裕があった。そこで「将来何かの役に立つかもしれない」とプログラミングを学び、高校3年の冬にはシード期の(創業して間もない)会社でエンジニアとしてインターンを始めた。エンジニア職にのめり込むことはなかったが、何もない所から自分たちの手で会社を作っていくという経験を得た。
2020年4月、慶大環境情報学部に入学。ほどなくして、アルバイト仲介アプリを手掛けるタイミー(東京・豊島)が新規事業の立ち上げで人材を募集しているという情報をキャッチする。同社は立教大学の学生だった小川嶺氏が設立したスタートアップで、今や「次なるユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)」と称される急成長企業だ。
「当時からものすごい勢いで伸びている会社で、かつ学生起業家界で有名な小川さんの下で(何もないところから新しいことを立ち上げる)ゼロイチのフェーズに携われるのは大きな価値になると思った」。迷わずダイレクトメッセージを送信した。
タイミーでのインターンについて「毎日が楽しくて仕方がなかった」と、山本さんは振り返る。リモートで大学の授業に出席し、残りの時間は全てインターンに費やした。「エンジニアの経験しかなかった自分が初めてマーケティングに携わり、施策の検証から営業先の見つけ方、敬語の使い方まで何もかもタイミーで学んだ」
一方、携わってきた新規事業は途中でうまくいかなくなりクローズ。山本さんも、そのタイミングで会社を離れることになった。しかしタイミーで過ごした密度の濃い5カ月間が、山本さんの背中を押した。「自分で事業をしよう」