転職で給与アップを狙うなら、現職で昇格が近道の理由
技術者の働き方ホントの話セレクション現職での昇格が転職後の給与増につながる
転職で給与を上げたいという人には、「現職の役職を少しでも上げておくこと」もお勧めしています。転職後の給与は役職に応じて決まることが多いからです。例えば、企業の大小にかかわらず「課長」の肩書は持っておくに越したことはありません。
よく「うちの会社の管理職なんて名ばかりだから」などと話す人もいますが、一歩社外に出ると人は肩書で判断されるものです。人材紹介会社にも管理職として登録され、中途採用面接でも管理職の人材として扱われます。課長相当の役割を「チームリーダー」と呼ぶような会社もありますが、その場合は履歴書には「管理職」と記載しましょう。
人材紹介会社も、現職で管理職を務めている人にはそれ相応の求人を紹介します。管理職という肩書によって紹介される案件が減ることも多々ありますが、それだけ希少価値があるということです。
現職で上位役職者の離職が相次ぎ、無理やり管理職にされてしまったという人もいるでしょう。「なぜ自分が管理職に」と不満かもしれませんが、転職活動で好待遇の案件の紹介を引き出すのには好都合です。転職してから役職・給与アップを目指して頑張るのもよいのですが、少しの間現職で我慢してポジションを上げてから転職するのも賢明な方法です。
転職時に、入社後の資格テーブルについて確認することも重要です。例えば転職先に「コンサルタント」と「シニアコンサルタント」という2つの役割があり、自分の前職の役割レベルだとコンサルタントに該当するとします。人事担当者に確認したら、コンサルタントからシニアコンサルタントになるには昇格要件や試験があり、入社後にそれを突破するにはかなりの負荷がかかることが分かりました。
こうした場合、給与は前職の水準のままで、資格テーブルはシニアコンサルタントの一番下の等級から始められないか掛け合ってみるとよいでしょう。それによって、入社後の昇格のしやすさが大きく変わってくるからです。
どの企業も、次世代の幹部候補となる人を確保しておきたい気持ちがあります。入社時点でその候補の地位を約束されるのと、入社後に一から昇格試験に挑戦するのとでは、その後の可能性に違いが出てきます。給与は前職のままでポジションだけ先に欲しいという交渉は、給与を上げてほしいという交渉より簡単かもしれません。
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。