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◆サンクコストの罠にご用心

ここでやめては元も子もない

路線変更のひとつに「見切り」があります。壁にぶち当たったからといって早々に諦めるのは感心しませんが、見込みがないのに努力をしたのでは時間のムダになってしまいます。

事例 地方銀行に勤めるFさんは、中小企業診断士の資格を取って独立することをスキルアップの目標にしています。
ところが、独力で勉強するもののなかなか受かりません。何年も落ち続けたのに、「せっかくここまで頑張ったのだから」と、仕事の合間を縫って勉強を続けています。果たしてそれは賢明な判断だと言えるでしょうか。

たしかに、ここで諦めたのでは、今までの努力が水泡に帰してしまいます。最後の踏ん張りどころであり、合格は目の前まで来ているのかもしれません。

ところが、時間や労力といった、今までかけてきたコストは、もはや戻ってきません。試験に落ちた段階で回収不能となっています。今さら悔やんでも、もう終わってしまった話です。

にもかかわらず、「ここでやめては元も子もない」とばかり、それらも勘定に含めて今の行動を決めるのは賢明ではありません。考えるべきは、今年投入するコストと得られるリターンが見合うかどうかです。

それが見合うのなら今年もチャレンジすればよく、見合わないなら違うことにコストを投下するほうが得策です。

「 もったいない」が仇になる

私たちはどうしても、過去に失って取り戻せないコストを合算して現在の判断をしがちになります。これをサンクコスト(sunk cost)の罠(埋没費用の誤謬)と呼びます。現在の費用対効果だけを考えないと、合理的でない判断を下してしまう恐れがあります。

典型的なのがギャンブルです。負けが込めば込むほど、今までの負けを取り戻そうと、どんどん傷口を広げてしまいます。仕事でもプライベートでも、「ここまでやって今さらやめられるか」と思ったら要注意。罠にはまっていないか、冷静になって考えてみることをお勧めします。

F さんの事例に戻ると、過去の努力は一旦脇に置き、「中小企業診断士の資格を取ると、どんな便益が生まれるのか?」を今一度問い直すべきでしょう。

経営コンサルタントになりたければ、コンサルティング会社に転職するのが近道です。独立開業するにしても、資格を取るよりは、経営の指南書を一冊上梓するほうが、客集めに効果があります。単に経営の知識を高めて仕事に役立てたいのならMBA という選択肢もあります。

合格の見込みも考慮しなければなりません。合格の期待値を見積もり、今年投下する予定の時間とお金に見合うかどうかを判断するのが、望ましい意思決定のやり方です。その結果、断念したとしても、過去の努力がムダになるわけではなく、それはそれで賢明な判断だと言えます。

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