リスキリングの伝道者 転職失敗100社からの学び直し
キャリアコラム後藤さんは11年にNPO「アショカ・ジャパン」の立ち上げを担った。この際にNTTドコモと携帯電話を活用した日本初の送金システムを構築するなどデジタル関係の業務にも携わった。金融とデジタルの知見を生かし、米フィンテック企業の日本法人も立ち上げたが、13年に撤退を余儀なくされた。
転職活動中、大半の採用担当者から「何のプロか分からない」
転職活動で辛い経験をするのはこの後の話だ。銀行員から人材・採用などHR関連、そして米国での起業、NPOやフィンテック企業の立ち上げなど数多くのキャリア経験を積んできた。経験豊富な後藤さんに対し、多くの日本企業はなぜ門戸を閉ざしたのか。「私はこれまでの経験からマネジャークラス以上のポストを求めました。しかし、大半の採用担当者からは、あなたは何者と問われた」という。一見華やかに見えるキャリアだが、「何のプロか分からない。金融、HR、グローバル、デジタルのどれも中途半端、専門家ではないよね」とダメ出しを食らったのだ。「社会問題をビジネスで解決したい」と面接官に志望動機を語ると、「絵空事じゃないの。それでお金もうけはできるの」と強く否定された。当時はSDGs(持続可能な開発目標)などの考えも浸透しておらず、ボランティア活動家のようにみられたようだ。

後藤さんはボランティア活動家のようにみられたようだ
だが、「捨てる神あれば拾う神あり」ともいう。15年に通信ベンチャーのトップから米国での起業家経験を買われ、海外担当役員として採用された。欧米で次々とM&A(合併・買収)を仕掛けるなど活躍し、デジタル分野での知見も深めた。その頃からIT(情報技術)関連の世界的なイベントには必ず顔を出し、人工知能(AI)やブロックチェーン(分散型台帳)など最先端のテクノロジー技術も貪欲に学んだ。その後、外資系のコンサルタントを経て、DX化の波が押し寄せる中で、欧米で台頭してきたリスキリングという言葉に出合ったのだ。