三井物産に「スケボー小僧」 SNSで学びのお助けマン
リスキリング戦略
三井物産社員の学びを自発的にサポートしている昆さん
三井物産には「スケボー小僧」と呼ばれる学びのヒーローがいる。米国のシリコンバレー支店に勤務する昆大暉さん(31)だ。船舶担当の普通の社員だが、社内SNSで自発的にデジタルスキル術や英語習得法などを日々投稿、毎日社内の500人余りの社員がチェックし、参考にしている。リスキリングを迫られる社員の「お助けマン」として活躍、社内ファンが急増中だ。
社内ではキーボードを持ち歩き、ヘッドホン姿
――シリコンバレーではどんな仕事をしているのですか。
「米国ではモビリティ部門で船舶関連の事業をやっています。出向のような形での船舶関連のスタートアップ支援や船舶売買などです。スタートアップではAI(人工知能)技術を活用して最適な航路の検証や燃費改善、環境規制への対策支援をやっています。日本には瀬戸内海に多くの海運業者がいますが、以前はよく伯方島(愛媛県)などに出張して船主の方のご支援をしていましたね」
――まさに典型的な商社パーソンですね。なぜスケボー小僧と呼ばれているのですか。
「社内を歩いている時の僕の格好がそう見えていたからです。5年ほど前からスケボーのような大型のキーボードを持ち歩き、ヘッドホンをして働いています。周囲の人からは音楽でも聴きながら、仕事をしているのか、変な奴だと思われていたようです。しかし、これは仕事の効率化を追求した結果なのです」
素早く情報整理、ショートカットキーを研究
――どうしてキーボードにヘッドホン姿なのですか。
「キーボードにこだわっているからです。多くの社員にとってはパソコンのキーボードをたたいて、データをまとめ、資料を作成したり、メールをしたりするのに費やす時間は少なくありません。いわば社員にとってキーボードは武士の刀のようなものだと思っています」
「顧客や上司からすぐに資料を送ってくれと指示されたときに、いかに素早く情報を整理し、求められたものを提供できるかがその後の信頼関係の鍵を握ると言っても過言ではありません。少しでも速く業務を推進できるよう、キーボードをうまく使って素早く作成する術はないとかと考えました。ショートカットキーの使い方などを調べ、研究して実践していました」
「ヘッドホンをしていたのは、英語などの電話会議で、相手との会話を聞き漏らさず、かつ両手でパソコン作業もできるようにするためです。携帯電話では手が塞がってうまく対応できません」
――スケボー小僧というイメージと違い、仕事に合理的なスタイルだったわけですね。
「残念ながら学生時代はテニスサークルで、スケボーをやったことは一度もありません(笑)。ただ、社内の人からそう見られたので、これは面白いと思って、社内SNS投稿の際のニックネームとして使い始めました」。