三井物産に「スケボー小僧」 SNSで学びのお助けマン
リスキリング戦略社内SNSで勝手に勉強会、部長も「いいね」
――ところで、社内SNSで学びの投稿を始めたきっかけは何だったのですか。
「同じ部署の先輩や同僚たちとショートカットキーの使い方など仕事を効率化するためのリアルな勉強会を開いていました。評判もいいし、他の部署にも広げればという声もありました。当時社内SNSはあまり活動的ではありませんでした」
「じゃ、ここを舞台に勉強会をやろうかと勝手に始めたら部長も投稿にコメントをくれて『いいじゃない』と。当時はまだ20代、年功序列色の強い商社でエラくなるには時間がかかりますが、少しは影響力を行使できるかもしれないという気持ちもありました」
――どんな投稿を始めたのですか。
「やはりショートカットキーなどパソコンの効率的な操作術が中心ですが、投稿対象とする操作術は拘って厳選しています。ショートカットキーに関するノウハウ本はちまたにあふれていますが、結局身につかない人が多い。これは本だと情報過多になり、実践のイメージが湧かず手を動かすところまで行かないことが原因だと分析しました。そこで会議通知やメールの検索、オンライン会議の設営など、社内の人なら誰もが使う操作をざっくり洗い出しました」
「そのうえで"サクサク簡単にデータをまとめ、グラフが作成できる"といった、フォロワーが具体的な使用場面と結びつけやすいように投稿文を工夫しながら、毎日1本ずつ、フォロワーが日々成功体験を積み重ねられるような頻度を意識して投稿してゆきました」
「さらに次々コンテンツを増やし『TOEIC必勝法』なども投稿しました。自分自身も英語を磨きたかったし、海外経験ゼロ・初受験でTOEIC満点近くをとることができたので、自分のノウハウを同僚や後輩たちに教えてあげたいと思いました」
若手もつらい、業務のスピード化を支援

毎日、多くの三井物産社員が昆さんのSNS投稿をチェックしている。
――このSNS投稿を多くの社員が毎日確認しているわけですが、実際の手応えはどうでしょうか。
「皆さんからありがとうという声をもらっています。なるほどこうすれば、もっとパソコンをうまく使えるのか、家族に自慢しているとか」。
「今、若手社員はどんどんしんどくなっています。世界中からの情報量が急増する中、常にスピーディーに処理しないといけない。昔は電卓をたたいて、伝票で処理したりしていましたが、今はExcel、そして新たなデジタルツール対応にも迫られています。トロトロ作業をしていたら、上司だけでなく顧客やパートナーの期待に応えられません」
「デジタルトランスフォーメーション(DX)やITの入り口、人間とデジタルをつなぐインターフェースであるパソコンの徹底活用にこだわらないのはもったいない、というスケボー小僧開始当時の想いが周囲にも伝わっていることを感じます。大先輩の方からも『デジタルに開眼した』とほめられたりしています」