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ゆるブラックな状態は構造的に拡大する

前回の記事〈残業もなく成長もない 「ゆるブラック企業」増殖中?〉でご紹介した「ゆるブラック企業」というキーワードは「残業はないが成長もない企業」としての定義でした。ただ、それはホワイト企業のことじゃないのか、という疑問を持たれた方もいるでしょう。決まった仕事を定められた時間の中でしっかりとこなしていけば、一定額の給与が保証されている状態としてみればそうかもしれません。ビジネスが続く限り雇用を失う可能性もないのであれば、ワークライフバランスを取りながら過ごせる理想的な状況ともいえるでしょう。

けれどもそれは、一定額以上の給与があればこそです。

仮にその金額が最低賃金すれすれだったり、新卒初任給と同等のものであったりしたら?

それをホワイト企業と言えるでしょうか。22歳時点でも30歳時点でも40歳時点でも50歳時点でもせいぜい新卒と数千円しか違わない給与額で、65歳で再雇用も終わった後、暮らしていくことはできるのでしょうか。そのような会社こそがゆるブラック企業であると私は考えます。

ゆるブラックであることは、企業全体にかかるわけではありません。同じ企業の中でも、ゆるブラックである部署もあればそうでない部署もあります。ゆるブラックになりがちな仕事を会社の戦略と照らし合わせてみるなら、既存ビジネス/業務の担当者と言い換えられます。

多くの会社には、今収益を生み出してくれている既存のビジネスがあります。経営者が優秀であるほど、この既存ビジネスは定型化されています。誰がやっても成果が出るような仕組み化がされ、そこに新しい人員が安い給与で配属されていく。そして短い期間で習熟し、一定レベルの成果を上げるようになります。

かつての年功処遇型企業においては、そのような仕事についている人であっても毎年少しずつ昇給をさせていきました。また、同じ仕事だけをずっと任せるのではなく、定期的なローテ―ションによって新しい仕事を覚えてもらうようにしました。

やがて年功で上がった給与額に見合うような役職にあらかじめ就け、ある意味給与の先払い的にチャンスを与え、役職者としての成長を促してきました。

そしてもともとの定型化された業務は、新卒が新たに担ってきたわけです。

ゆるブラック企業が目立ち始めた背景には、上記でのローテーションや先払いでの昇格がなくなったことで生まれてきた側面もあります。

なぜならローテーションには異動や転勤が伴います。そうなるとプライベートの生活に支障が出る場合もあります。また先払いでの昇格はプレッシャーにもなります。適性のない人からすれば、たとえ先払いで役職手当が増えたとしても、それに見合った責任だとは思えないでしょう。企業はそれらの働く人のニーズに応える形で、会社都合での異動を減らし、誰しもが役職を目指すべきだという昇格運用を縮小してきました。

かつての年功昇給があたりまえだった時代には、それでも右肩上がりに社会が成長していたから、給与を少しは増やせました。でも今ではそれは無理です。結果として、慣れ親しんだ仕事をずっと続けられる環境が生まれます。ただ、同じ仕事をする限り人件費は増やせないので、昇給がなくなってしまったわけです。

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