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資格や検定合格、大学でのプログラム受講などを証明するデジタルツール、オープンバッジの活用が広がっている。転職や社内でのキャリアアップなどに生かすにはどうすればよいか。取得の方法や使い方を解説する。

オープンバッジって何?

学びのデジタル証明書

オープンバッジとは、資格や検定合格、大学でのプログラム受講などを証明するデジタルツールだ。統一された国際標準規格があり、欧米では大学や企業で活用されている。国内でも資格認定団体や企業、大学など発行する機関が広がっている。

オープンバッジの仕組み

ブロックチェーン技術で改ざんや偽造ができない仕組みが採用されるなど、信頼性が高い。教育プログラムの受講や資格試験の合格などでバッジを取得すれば、SNSで発信したり、電子履歴書に載せたりして、自分のスキルをアピールすることが可能だ。

オープンバッジの種類

オープンバッジが証明するものは、主に「スキル」「知識」「参加・受講」に分けられる。

スキルを証明するバッジ

社内の資格など、専門的な技術スキルを証明する。たとえば、旭化成は、自社のデジタル人材育成のために「DX OpenBadgeプログラム」を開講し、スキルを身につけた従業員にバッジを発行している。

知識を証明するバッジ

大学の社会人向け講座を修了した場合や、国家資格を取得した場合も、バッジで証明できる。たとえば、武蔵野大学が出版社のインプレスとともに毎年開講している「社会人向けデータサイエンス&AI人材育成プログラム」は、修了者にオープンバッジを授与している。

参加・受講・表彰を証明するバッジ

ワークショップやイベントへの参加、ボランティア活動への参加、表彰などでもオープンバッジが与えられる。成城大学では、学長賞の受賞者や特待生にもオープンバッジを授与している。

オープンバッジのメリットとは?

取得者にとってのメリット

自分が身につけた知識やスキル、資格を、高い信頼度のもとに提示できるのが最大のメリットになる。世界各国の様々な機関が発行したオープンバッジを自分専用のウォレットにまとめて保管・管理できるので、SNS(交流サイト)やメールなどデジタルツールを使って、いつでも提示することが可能だ。

発行団体にとってのメリット

信頼度の高い資格証明、受講証明として受講者に安心感をもってもらえるほか、証明書発行などの事務作業も軽減できる。企業が社内研修などに利用する場合、社員の学習履歴を管理するツールにも有効だ。

オープンバッジの活用方法

SNS・メール署名でアピール

TwitterやFacebook、LinkedInなどのSNS、メールの署名にもバッジを載せ、資格をアピールすることができる。

就活や転職の履歴書、名刺にも

就活や転職の際、電子履歴書にも添付できる。採用担当者が添付されたオープンバッジをクリックすれば、どのような資格かわかる。

オープンバッジを集めたウォレットのURLをQRコードにすれば、名刺や自己紹介資料にも添付することができる。

発行しているところはどこか?

大学・教育機関

日本でも、国公立大学から私立大学まで、オープンバッジが広がりつつある。東北大学、中央大学、法政大学、成城大学、成蹊大学、同志社大学、横浜国立大学、長崎大学、放送大学、人間総合科学大学などで導入されている。社会人向けプログラムの受講で授与されるオープンバッジも増えつつあるが、所属する学生のみを対象とする大学もあるため、自分が受ける社会人向け講座がオープンバッジ授与の対象になっているか、事前に確認しておきたい。

資格認定団体

公益社団法人、日本マーケティング協会の「マーケティング検定(Advanced Marketer)」、特定非営利活動法人、通訳技能向上センターの「TOBIS(ビジネス通訳検定)」、公益財団法人、日本数学検定協会の「ビジネス数学検定」などで、それぞれバッジが授与されている。

研修・教育事業を手がける企業が主体になって受講者・合格者に授与するケースもあり、データサイエンススクールを運営する企業、データミックス(東京・千代田)の「データ分析実務スキル検定(CBAS)」などがある。

企業・官公庁

企業では、旭化成が「DX OpenBadgeプログラム」の修了、パソナグループが「リスキリングイニシアティブDX推進人材育成プログラム」の修了でバッジを授与している。社内研修の可視化に利用するケースだ。官公庁ではデジタル庁が「デジタル推進委員」の任命などにオープンバッジを活用している。

海外の団体

海外では7千万以上のオープンバッジが発行されている。米ハーバード大学やイタリアのミラノ工科大学、仏ボルドー大学、仏カーン・ノルマンディー大学といった名門大学でも活用されている。

バッジの受領方法

日本の代表的なオープンバッジ発行機関である一般財団法人オープンバッジ・ネットワークのオープンバッジであれば、「氏名」「メールアドレス」「パスワード」を登録し、ウォレット・アカウントを作ると、クラウド上の自分専用「オープンバッジウォレット」でバッジを受け取り、管理できる。そのため、自分のスキルや資格、学習歴をまとめてPRすることが可能だ。

教育機関がバッジを授与するには

教育機関にとっても、バッジの授与により、偽造や改ざんの防止、受講者のモチベーション向上などのメリットが期待できる。バッジの受領者がSNSでバッジをPRすれば、講座や資格自体の宣伝にもつながる。

オープンバッジ・ネットワークのバッジを発行する場合は、同法人の審査を受けたうえで、バッジ画像などを登録する。バッジを作成してから、受講者のバッジ受け取りまでは、1カ月半から2カ月ほどかかる。

バッジを作るための会員になるには、入会金10万円、年会費20万円〜(いずれも税別)を支払う必要もある。

日本で注目されているバッジ5選

グーグル・キャリア・サーティフィケーツ

Googleが提供する、IT分野のキャリアアッププログラム。日本向けに開講されているのは、「データアナリティクス プロフェッショナル認定証プログラム」だ。プログラムはすべてオンラインで受講でき、データアナリストとしての初歩的な業務に必要なスキルを学ぶことができる。

主に、分析のためのデータクリーニングや、スプレッドシート、SQL、Rプログラミングなどの使い方を習得できる。

受講時間は平均180時間以上で、プログラム終了までの目安は、週10時間受講した場合、約6カ月間という。受講料は月額39ドル。

名古屋商科大MBA

世界3大MBAランキングとして知られる、英国の高等教育評価機関「クアクアレリ・シモンズ」と英紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」のランキングで、国内上位に位置している経営大学院。実務家教員によるMBA講座が東京、名古屋、大阪で開講されており、社会人が土日のみでMBAを取得できる。

MBA取得だけでなく、会計学や税法を学び、修士号(経営学)を取得した場合も、バッジを受けとることができる。

環境社会検定試験(eco検定) 

地球温暖化やエネルギー、放射性物質といった環境に関わる問題や、企業における環境への取り組みなどの知識を問う検定。企業にもSDGsを意識した取り組みが求められる昨今、就活や転職でアピールしたり、企画・営業などの場面で知識を活用したりできる。

年2回検定があり、直近では6月9〜20日に申し込むと、7月14日〜8月3日に試験を受けられる。試験は自宅や会社などのパソコンで受験可能だ。

検定を実施する東京商工会議所によると、建設業、情報通信業、製造業で働く人の受験が多く、合格者の7割の学習期間が2カ月以内だという。

放送大学キャリアアップ支援認証制度対応講座

インターネットで配信されている有料講座を修了すると、それぞれについてバッジが発行される。放送大学の学生でなくても受講でき、「データサイエンス基礎」「AI基礎」「機械学習概論」などの数理・データサイエンス・AI講座や、プログラミング教育の指導法を学ぶ講座がある。

東北大学MOOC

東北大学が提供する大規模公開オンライン講座。10分×9回×4週分といったように、講座が短時間ごとに無料で提供され、隙間時間で気軽に受けやすいのが特徴だ。テストに合格すると、オープンバッジが与えられる。

これまで、「自己理解の心理学」「放射線安全社会入門」など、さまざまなジャンルの講座があった。2023年度も「社会の中のAI」「進化発生学入門」「男と女の文化史」などの講座の案内・募集が始まっている。

ライター 吉川真布(株式会社Linkard)

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