変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

ハードワークとおなかの調子

―鈴木さんは現役時代、ピッチでのハードワークでよく知られていました。縁の下の力持ちであり、「水を運ぶ人」とも呼ばれていました。ご活躍は、おなかを整えていたことと関係がありますか。

多くの選手は、冷たいものを取りたがるんですよね。気持ちはわかるのですが、僕は食事の終わりには必ず温かいお茶を飲んでいました。また、海外遠征のときには梅干しを持参していましたし、おなかにおきゅうをしたりもしていました。

それが直接効果があったのかどうかはわからないですけど、海外の試合でほとんどの選手が下痢をする中、僕は元気だったということもありました。

―腸内環境を整えることで、ビジネスパーソンが抱える不調も解消されますか。

そうですね、やはり、腸は人間の健康にとって土台のようなものだと思うんです。栄養は腸から吸収されますので、まずは腸を整えることはとても大切です。おなかのコンディションがよければ、精神的にも安定するとも言われています。

監督から学んだ経営の知恵

―長年のサッカーでの経験を、ビジネスにどのように生かしているのでしょうか。

セミナー当日の様子(左=鈴木啓太氏 右=聞き手の日本経済新聞社 桜井陽)

セミナー当日の様子(左=鈴木啓太氏 右=聞き手の日本経済新聞社 桜井陽)

16年の選手生活の中で、17人の監督と仕事をしました。それぞれに特色があるのですが、「この人のスタイルがいいな」と思う監督のやり方を自分の中で消化してやっています。監督の言うことは、当時からよくメモしていましたね。

経営者が事業を通じてどのような社会を実現していきたいのか、ということと、監督がサッカーの試合でどんなサッカーを表現していきたいのかは、同じことだと感じています。

―特に印象に残っている監督はいますか。

ワールドカップ出場を逃した「ドーハの悲劇」のハンス・オフトさん、5月に亡くなったイビチャ・オシムさん、今はコンサドーレ札幌の監督をしているミハイロ・ペトロビッチさん、ですかね。

―外国人監督ばかりですね。

そうですね。特に外国人監督は、サッカーを一般生活や人生に例えて語る能力に秀でている気がします。話がすごくわかりやすいというか。

例えば、ペトロビッチ監督は「試合はジェットコースターだ」と言っていました。急に上ったと思ったら落下する。常にそのような状態であると。ジェットコースターのような環境で戦うには、食べ物や体のケアなどをしっかりしてコンディションを整えることが大切、というメッセージがストンと入ってくるんです。

自分で考えて動ける人を育てるオシム流

―セミナーの事前アンケートでオシムさんとのエピソードを聞きたいという声がありました。ビジネスパーソンにとっても参考になりそうです。

オシムさんが招集した代表合宿に行ってみると、具体的な練習メニューが一切書かれていないことがありました。練習終わりの時間だけ書いてあったんです。

―それは書くのが面倒だからではなく。

違います(笑)。普通は「何なんだ?」って思いますよね。でもこれは、ピッチの中では何が起こるかわからないことを想定した、頭のトレーニングなんです。次の日の練習開始時間すらも書かれていない。でも、オシムさんに言わせれば「次の日がどうなるのかなんてわからない。選手の顔を見て決める」というわけです。

だから、選手は常に頭を動かしておく必要がありました。言われたことを自動的にこなす選手ではなく、自分で考えて行動できる選手を育てたかったのだと思います。これも経営スタイルの1つと言えますよね。

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