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旧松下に入社、アイデア企業のくら寿司に転身

パナソニックIT部門から転身した中林さん

パナソニックIT部門から転身した中林さん

中林さんは1992年に新卒で当時の松下電器産業に入社。以来、一貫して情報システム部門を歩み、プロジェクトリーダーなどとして活躍した。ただ、伝統的な日本の大企業のシステム部門は、製造や販売などメイン部門を支える裏方という性格が強い。

50代前半になって転職を考えた中林さんは、大阪発で急成長するくら寿司に興味を覚えた。創業者の松下幸之助と似たような経営理念を掲げ、ロボティクス関連の先進技術を導入、様々なアイデアを駆使して事業を拡大していたからだ。

同社は、他社に先駆けてQRコードを使った時間制限管理システム、空気中の菌やほこりから守る「抗菌寿司カバー鮮度くん」を導入したほか、一定時間レーン上に置かれた寿司の廃棄システムも稼働、食の安心・安全性を追求している。顧客満足度を高めるエンターテイメント機能の「ビッくらポン」は景品が当たる仕掛けで顧客から人気を博して集客増につなげた。

営業効率を高めるための皿(水)回収システムも開発、AI(人工知能)技術を活用したハマチ養殖も実施するなど食材の安定調達も推進。様々なシステムや商品サービスを開発、多くの特許も取得している。

各部門の現場発のアイデアが次々実を結び、会社は成長した。しかし、コロナ禍での食材コスト上昇で経営環境は厳しくなっている。最近ではSNSを介した迷惑行為が相次ぎ発覚、食の安心・安全も脅かされている。回転ずし大手の競争も激化する中、さらなる経営改革が求められていた。

「会社全体のDXをやらせてください」。入社前の社長面談で中林さんはこう訴えた。社長直轄のDX部門を立ち上げ、漁港からの調達、工場での加工、各店舗への配送、デジタルマーケティングや店舗開発・店舗オペレーションに至るまで一気通貫のバリューチェーン改革に挑んでいる。

中林さんは、まず同社のDXビジョン策定を進めた。「デジタルテクノロジーとデータを活用した企業理念の実践」を掲げ、全従業員に理解しやすいように、「デジタルを使い、社員のアイデアを具現化し、困り事を解決しよう」と呼びかけた。具体的にどんなDXが考えられるのだろうか。

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