マーケターが京都と長崎で副業 地方の「熱量」に驚き
あしたのマイキャリア
青木一剛さん 一橋大学卒業後、大手金融機関に入社。米国エモリー大学でMBA取得後、複数の外資系消費財メーカーにてマーケティングに従事。現在は、外資系IT広告企業で企業にデジタルマーケティング戦略・施策提案を行うほか、副業で京都市の成長戦略推進アドバイザーや長崎県のマーケティングアドバイザーなどを務める
近年、優秀な人材の力を求めて「副業人材」を公募する自治体が増えています。今回のあしたのマイキャリアは「自治体副業」に挑戦している、外資系IT広告企業で働く青木一剛さん(36)の体験談をお届けします。京都市役所と長崎県庁の2カ所でマーケティングアドバイザーを務める働き方とは。エン・ジャパンで官公庁などの採用支援を行う「ソーシャルインパクト採用プロジェクト」プロジェクトリーダーの中林辰馬さんが話を聞きました。
人口減少や地方産品PRにマーケティング経験生かす
──まずは、副業を始めたきっかけについて教えてください。
「知人の経営者から『副業としてマーケティング戦略について相談相手になってほしい』と依頼を受けたのがきっかけで、副業を始めました。マーケティング顧問という立場でしたが、むしろ私のほうが実践的な学びにつながることが多く、さらにいろいろな経験を積んで知見を広げたいと考え、副業求人にいくつか応募するようになりました」
「これまでJリーグ所属のプロサッカーチームのマーケティングアドバイザーなどを副業で経験し、現在は京都市の成長戦略推進アドバイザーや長崎県県産品のデジタルコーディネーターなどをしています」
──地方自治体の副業では、具体的にどのようなことをされているのですか。
「京都市では、人口減少による財政課題を解決するための移住・定住促進に関する戦略と施策を提案しています。特に若い世代が京都市への移住を考えてもらえるような企画を考えています」
「長崎県では、全国的に認知が低いという課題を抱えた県産品のPR・マーケティングのアドバイスです。例えば、麦焼酎が長崎県発祥であることや、アジやいちご、じゃがいもの生産量が多いことは、他の地域ではあまり知られていません。魅力的な県産品をより多くの方に手にとってもらうための施策を提案しています」
──地方自治体での副業は、どのような経緯で始めたのですか。
「自治体の仕事は、民間と比べて世の中に対する影響力が大きいので、私の経験を生かせる仕事であれば、挑戦してみたいと以前から興味を持っていました。偶然、若手ハイキャリア向け転職サイト『AMBI』で募集を見て、地方創生に挑戦できる機会だと思いすぐに応募しました」
──副業という形で、複数の仕事に挑戦するメリットはありますか。
「本業ではできないような経験を積むことができるのは大きなメリットだと思います。私は長期スパンでキャリアについて考えており、目標から逆算して、今何をすべきか決めています。20代でマーケターを志した時から、30代ではCMO(最高マーケティング責任者)になりえる人材になりたいと考えていました。いろいろなマーケティング課題に取り組みながら経験値を積むことができる副業は、貴重な成長の機会です。また、副業で培ったスキルや経験は、本業でも生かされています。成長を短期間で実感しますし、違うジャンルの組織など、新たな分野での副業にもっと挑戦したい思いが強くなっています」
「また、副業にはリスクを抑えて、自分が関心を持つ業界や環境に挑戦できるというメリットもあります。転職となると、待遇面や働く環境などでためらってしまうこともあるかもしれませんが、副業であれば本業を続けながら本格的に携わることもできます」