味ぽん、なぜ万能調味料に 仕掛けた「しょうゆ代わり」
ミツカン「味ぽん」(下)
ヒットの原点「減塩」をアピール 健康志向が追い風に
健康志向の高まりは、味ぽんの追い風にもなっているようだ。掛田さんは「健康に気遣って、塩分を控えたい人たちを意識して、『しょうゆより味ぽんを』と呼び掛けてきたことも一役買ったかもしれません」と話す。ミツカンは04年から「しょうゆよりぽん!」をキャッチフレーズに、さっぱりした味で塩分を控えやすいメニューを紹介してきた。
とうふの冷やっこ、ホウレンソウのおひたしなどの献立を提案。しょうゆが「お約束」だった刺し身についても、味ぽんを使うと、減塩効果が見込めると売り込んだ。テレビCMでも「100年おいしく健康!」と減塩メニューを押し出している。

ミツカンMD本部商品企画部商品企画2課の掛田実穂さん
「味ぽんを使えば(しょうゆに比べて平均で)35%ほど塩分が少なくできるとされています。実は、2000年ごろまでは味ぽんを使う(水炊きのような)象徴的なメニューが家庭で少なくなり、販売の伸びも鈍化しつつありました。そこで健康に配慮できる調味料としての打ち出しを考えました」(掛田さん)。
1人暮らしや個食の需要が増えてきたことから、14年には190ミリリットル入りの「味ぽん ちょいかけボトル」を発売。これもヒットした。大容量でキッチンに、小ぶりボトルで食卓へと、両方でプレゼンス(存在感)を高める戦略が支持を受けた。
ミツカンのウェブサイトには減塩専門のページ「いつもの調味料でおいしく減塩」があり、減塩の献立・レシピを数多く載せている。
さらに味ぽん以外にも、ミツカンの祖業であり、今も主力商品である食酢と、自社のめんつゆを使うことで「塩分をカットしても味を際立て、うま味の多い調理が可能です」と紹介。酢を起点とした、重層的な自社商品ラインアップで健康メリットを推している。酢がもたらす健康イメージを受け入れる流れも、ミツカンの酢関連商品への支持を押し上げたようだ。
江戸時代の1804年創業という起源を持つミツカンだけに、歴史的な信頼感は大きい。気候や地下水に恵まれた愛知県半田市周辺は古くから醸造業が盛んだった。酒から酢やみりんへと、醸造技術を生かした発展が続いたという。
味ぽんが「鍋外」でファンを増やす一方で、「味ぽんでは酸味がきついと感じる人もいました」(掛田さん)。そうした声を受けて、09年にはコンブだしで味わいをまろやかにととのえた「味ぽんMILD(マイルド)」を発売した。
大根おろし、ゆず皮など様々な「具入り味ぽん」も商品化してきたミツカンだが、姿を消した商品も少なくない。「MILDはシリーズでは大きなヒット商品となりました」と掛田さん。購入者が増えて定番の調味料となってきた流れを受けて、19年には600ミリリットル入りボトルも発売された。