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1割の女性が生理などで働き方変更 挑戦回避や転職も

生理などの症状が原因で働き方を変えた女性は少なくない。パーソルキャリア(東京・千代田)が1月に実施した調査では、PMSや生理による症状で働き方を変えた、と回答した女性の割合は9.3%だった。職場での役割分担を軽くするなど社内での働き方を変えるほか、転職や休職を選ぶ人も多かった。

女性特有の症状は男性上司にも伝えにくい。女性社員が自信を持てないことにもつながりかねず、女性活躍の推進には話しやすい職場づくりも欠かせない。

婦人科系疾患の予防を啓発している一般社団法人シンクパール(東京・千代田)代表理事の難波美智代さんは「企業では従業員の抱える身体的な問題と意欲や能力を切り離して考えないと、組織の競争力もワークエンゲージメントも高まっていかない」と指摘する。

「フェムケア」、女性活躍を推進 ソフト面の整備もカギ

おりものシートの「サラサーティ」ブランドを30年以上前から展開してきた小林製薬。乳がんや子宮頸(けい)がんの検診は通常対象が30歳以上となるケースが多いとされるなか、同社では18歳から自己負担なしで受けることができる。

20年1月からは通院だけでなく自己研さんなどにも使える期限1年間の長期休暇制度を始めた。導入のきっかけとなったのは数年前、不妊治療に専念するために会社を退職した30代の女性社員がいたことだ。離職しなくてもすむように不妊治療など健康面でのサポートを強化する目的で新制度を整備した。

人事部長の富山有子さんは「多様な働き方を支援して離職しないでキャリアを形成できる環境をつくっていきたい」と語る。1月には不妊治療を含む通院で使える新たな休暇制度も設けた。

21年の女性管理職の比率は12.8%と16年比で4ポイント高まった。富山さんは「社内全体でヘルスリテラシーを高めていく必要がある」と力を込める。

総合人材サービスのパソナグループは女性社員比率が6割を超える。これまで不妊治療にも使える休暇制度や通院などに使える時短勤務など制度を充実させてきた。

21年9月には女性活躍を健康面で支援する企業向け新サービス「Kira+sup(キラサポ)」を立ち上げ、自社にも導入した。女性の健康問題や妊娠、出産などに関する悩みをオンラインで相談したり、女性に多い病気などをテーマにした研修を受けられたりする。今後女性社員の採用を増やしたい企業などの利用が増えているという。

女性役員比率は22年5月時点で35.8%と13年比では12.9ポイント上昇しており、リーダーの輩出と女性にとって働きやすい環境の整備とは表裏一体となっている。

近畿大学の松原光代准教授(雇用問題)は「健康問題について話しやすい職場をつくるなどソフト面の整備も同時に進めないと歯車は回らない」と話している。

ヘルスリテラシーの向上、急務



生理などによる不調を理由に働き方を変えざるを得ない女性が多いことに驚いた。パーソルキャリアのアンケート調査結果では、女性特有の症状で仕事に支障がある女性のうち、働き方を変えたり諦めたりした割合は5割を超える。仕事上の挑戦を諦めたり、離職・転職するなど職場を離れる人も多い。働き方を変えないまでも「症状があったが我慢/無理して仕事を続けた」人は全体の2割を超える。

人手不足が深刻化するなか、従業員の離職や挑戦の回避は企業にとって痛手だ。女性の可能性を活力に変えていくには健康支援や労働環境におけるヘルスリテラシーの向上が急務になっている。
(加藤彰介)
[日本経済新聞朝刊2022年10月24日付]

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