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仮説思考力を徹底的に学んだ

なぜ同じやり方ではうまくいかないのだろう。自分のトークを振り返った。

営業はチェックイン業務と似ていると感じたが、ホテルの宿泊客は、旅をしたくて来ている。自分たちは、その楽しみを最大化するお手伝いをすればよかった。

いまは違う。顧客は営業支援ツールを使いたいわけではない。関心があるのは、いかに効率的に利益を上げ、顧客満足度を上げられるかだ。

顧客の売り上げにつなげるには、どのように自社商品を使ってもらえばいいのか。そう考えると、自分が顧客について何も知らないことに気づいた。

山里さんは、まず業界について学ぼうと考えた。3人のチームメンバーや上司と話し合い、毎日のように社内勉強会を行なった。業界構造や事業モデル、どんな商品をどのように売っているのか。チャネルはどこで、競合はどこか。時には、社内の業界経験者に頼んで講師になってもらった。

営業支援ツールを導入してもらうには、相手の課題を知る必要がある。だが「何にお困りですか」と聞いても、必ずしもストレートに答えが返ってくるわけではない。事前にリサーチを重ね、仮説を立てることで、初めて意義のある情報を引き出せる。情報収集するリサーチ力と仮説構築力。ここに大きなスキル不足がひそんでいた。

「社内では、論理的妄想と言っています。お客様がこんなことをやりたいんじゃないか、こんなことにお困りではないか。事実やデータに裏付けられた妄想を尽くして、初めて意義のある提案ができると教わりました」

たとえば消費財メーカーでは、小売店における棚の確保が命題であるように、営業課題は業界ごとに異なる。ステークホルダーや意思決定プロセスも千差万別だ。コーポレートサイトやプレスリリースから情報を集め、仮説を立て、提案を組み立てた。

4カ月がたった頃、徐々に数字が上がり始めた。その頃、再び異動になった。CS BPO部門で新チームを立ち上げるためだ。

営業の面白さを少しでも多くの人に知ってほしい

21年の入社時に20人だった社員は、翌年には40人、いまでは80人になった。組織が急拡大する中、山里さんはアソシエイトマネジャーというポジションに就いた。プレイヤーとして営業に従事しながら、十数人の部下育成に取り組む。マネジャーとしてのスキルもやりながら磨いていかなければならない。

かつての自分のように、異業種から飛び込んでくるメンバーも多い。未経験であったことは、マネジメントをする上で強みになっている。

お客様がどこを目指していて、何を課題と感じているのか。その仮説構築力こそが重要であり、それは営業以外の仕事とも通じるのだと、山里さんは試行錯誤の中で学んだ。一緒に働くメンバーに、そのことを伝えたいと考えている。

「かつての私は、営業だけはやらないと思っていました。いまは営業という仕事の魅力を知る人が一人でも増えたらと思います」

(ライター 渡辺裕子)

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