人生と仕事の新デザイン タナケン先生×グラットン氏
「キャリア」は誰のもの「企業間で連携することは素晴らしい取り組みですね。私も『フューチャー・オブ・ワーク』というコンソーシアムを立ち上げました。アイデアの共有は重要です。それに、世界が今、日本に注目しています。日本企業が変わりたいという意思表示を行うことは大事なんです」
日本は工場っぽいオフィス
「率直な意見を申し上げますと、多くの日本企業は工場をオフィスで再現しようとしています。第2次世界大戦後の目覚ましい産業化の過程で、工場を起点に新しい仕事のやり方が生まれたのだと思います。そして今、日本企業が何に苦しんでいるかというと、デザイン関係やテクノロジー業界などクリエーティブな仕事ですよね。ナレッジワーカー(知識労働者)がいるにもかかわらず、日本は工場っぽいオフィスになっていて、同じ時間に出社する。タイムカードで管理する。そうした働き方が固定化されていて、今も本質的に変わっていないのではないでしょうか」

田中氏は「何歳からでもチャンレンジできる」という考え方に共感するという
「日本企業はグローバルスタンダード(世界標準)に近づくべきです。英石油大手のシェルは20年前、年功序列で一斉に昇格していくという考え方をやめました。米グーグルなど新しい会社はそもそも年功序列にしなかった。日本企業はいまだに年功序列を重視していますが、それが多くの問題を生んでいます。特に若い人にとって」
「近著『ライフ・シフト2』では意図的に日本人の登場人物を入れました。20代のマドカとヒロキです。特に、日本の読者にヒロキは別の生き方ができると示したかったんですよ。ヒロキは父親と同じように、日本の会社にずっと勤めなくてもいいんです。そして、ヒロキが別の生き方ができると感じるためには、日本企業が彼にもっとチャンスをあげないといけません」
英ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威で、組織イノベーションに関するコンサルティング会社「HSM(Hot Spots Movement) Advisory」の創始者。世界経済フォーラムの「新しい教育と仕事のアジェンダに関する評議会」の共同議長を務め、2013年からダボス会議に参加。18年から日本政府の「人生100年時代の社会をデザインする会」のメンバー。
(安田亜紀代)