転職失敗事例「買い取り」から見えた5つのパターン
あしたのマイキャリア
オープンワーク(東京・渋谷)の大澤陽樹社長
「年収が上がった」「やりたい仕事ができるようになった」など、転職成功者の話を見聞きすることは多いですが、転職の失敗事例が取り上げられることはまだ少ないです。口コミサイト大手の「オープンワーク」は、「失敗事例にこそ、転職を成功させる秘訣が隠れているのではないか?」と考え、転職失敗エピソードを寄せてくれた人に抽選で賞品を送る「転職失敗買取屋」を2022年7月に実施。そこから見えてきた、転職に失敗する5つのパターンを、同社の大澤陽樹(おおさわ・はるき)社長に話を聞きました。
――そもそも、なぜ転職失敗談を集めようと考えたのですか。
「成功談に比べて、失敗体験はあまり共有されません。最近『タイパ(タイムパフォーマンス)』という言葉が出てきているように、20代、30代の若い世代を中心に限られた時間のなかでなるべく失敗せずに最高の結果を出したいという傾向があります。そういうなかで、転職ではどういう失敗が起こりがちなのか、あらかじめ学んでおくことができれば、成功に向けて役立ててもらえるのではないかと考えました」
――転職失敗パターンにはどのようなものがあるでしょうか。
「寄せられたエピソードを読み、5つの失敗パターンに分類しました。1つめは、好条件に目がくらんでしまうもの。『年収1000万円』『残業時間ゼロ』といった文言に踊らされてしまうパターンです。2つめは、1人の発言だけを信じてしまった結果、ほかの面が見えていないパターン。人事担当者から『あなたが必要だ』と言われたことをうのみにし、現場が求めるスキルや人物像は違ったといったものだったケースがこれに当たります」
「3つめは、あらかじめ具体的に仕事内容や働き方について情報を得ていても、自分の身に置き換えてイメージできていなかったパターン。例えば働き方について、漠然と『私は体力があるし、激務に耐えられる』と思っていても、毎日タクシー帰宅をして仕事を続けていけるかどうか、その点まで想像することが必要です」
「4つめは確認不足。確認したいことがあるのに、質問することが面接で悪い評価になるのではないかと気にして分かったふりをしてしまうもの。プライドが高めの人にありがちな失敗です。5つめは業界や企業規模など、ステレオタイプなイメージにとらわれてしまっていること。一例として『ベンチャー企業』と言っても、創業間もないスタートアップから、ほぼ大手に近いような企業まで様々です。自分が持つ固定観念に縛られずに、実情をよく調べる必要があります」
「転職失敗買取屋」に寄せられた転職失敗エピソードの具体例
失敗を防ぐ秘訣は「ソフト面」の自己分析
――この5つのパターンから見えてくることを教えてください。
「結論として、仕事内容や社風などの企業分析が不十分で失敗につながっているのではないかと考えています。企業分析不足の原因としては、人間が『思い込み』をしやすい生き物だということが挙げられるでしょう」
「心理学の用語では『確証バイアス』と言いますが、人間は自分にとって都合のよい情報を信じてしまう傾向があります。例えば内定をもらった企業について、この企業に入りたいと思うと、その企業のマイナス情報は入りづらくなります」
――失敗を防ぐにはどうしたらいいですか。