変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

「企業にはいい一面だけではなく、いろんな側面があるという前提を踏まえて企業選びをすることが大切だと思います。加えて、あらかじめ自分がどんなバイアスを持ちやすいかを認識しておくとよいでしょう。これまでの人生を振り返って、『人から言われたことを信じやすい』とか『突っ込んで聞きにくい』『ステレオタイプな考えに縛られやすい』など、思い当たる節はないでしょうか。自己分析をして自分の傾向を把握しておくと失敗を防げます」

「自己分析はハードとソフトの2つの面に分けてすることをおすすめします。ハード面は年収や残業時間、福利厚生など求人票に書かれてある、目に見える条件のことです。この確認をしっかりする人は多くいるのに対し、社風、人間関係、成長環境といったソフト面のことまで分析できている人は意外と少ない。実は退職理由で多いのは年収などのハード面よりも、ソフト面のほうなのです。自分は成長を求めているのか、どういう社風、人間関係のなかで働きたいのかを分析しておくと失敗を防げるでしょう」

年代別・失敗の特徴 20代は経験不足、50代は? 

――失敗の特徴を、年代別に教えてください。

「20代は、経験不足から起きる2つの失敗パターンがあります。1つは、企業選びの軸が失われてしまうこと。『好きなことを仕事につなげたい』と思って就職した企業で働いていても、同年代の人から起業した話や、年収も含めて成長スピードの速い話を聞いてしまうと、それに惑わされて転職をしてしまう人がいます。もう1つは、『今の仕事や環境がいやだから』という一時的に逃げるための転職をしてしまうこと。これには、長期的な視点が欠けていることが背景にあります。将来のことを考えると自分の市場価値を高めていくべきですが、本人はあくまで今の職場にいるのがいやで転職してしまったので、新しい職場でも『なぜ自分を鍛えなければならないのか、成長をしなければならないのか』と思ってしまうようです。

「30代、40代になると経験があるゆえの誤解をしがちです。面接で『私はどれくらいのポジションを与えてもらえるのか』『現職では課長を務めているので、企業規模の小さい御社では部長以上をさせてほしい』など、役職にこだわる発言をする人が予想以上に多くいます。転職して環境やビジネスモデルが変わるなか、ある程度の調整期間は必要ですし、新しい成果の出し方もあるはずです。新たな職場での価値の出し方を学んだうえで、今までの経験を生かしていくべきであって、最初から自分のことを過信するのは避けるべきでしょう。結果や信頼がともなえば、役職は後からついてきます」

「これについては、採用する企業側も注意すべき点ではあります。『大手企業で巨大プロジェクトの責任者を経験』などと聞くと、過度に期待してしまうケースもあります。企業、転職希望者の双方がお互いの解像度を高めることが大切でしょう」

「50代以上は、転職の最初の段階で固定観念を取り払っていろんな可能性を探ってほしいと思います。例えば転職先は、本当に首都圏の大手企業でなければならないのか? 30年ほど働いてきて体に染みついている大前提はあるでしょうが、それにこだわって、自らの可能性を狭めてしまっている人もいます。大企業でゼネラリストとして様々な経験を積んできた人が、地方でニーズが高いことはよくあります。そうした企業に転職し、その企業を急成長させるような活躍を見せている人も実際にいます。転職先を検討する段階で視野を広げ、柔軟にものごとを見ることが成功につながるのではないでしょうか」

大澤陽樹
オープンワーク社長。東京大学大学院卒業後、リンクアンドモチベーション入社。中小ベンチャー企業向けの組織人事コンサルティング事業のマネジャーを経て、企画室室長に着任。新規事業であるインキュベーション(ベンチャー投資)事業やモチベーションクラウド事業の立ち上げ、経営管理、人事を担当。2019年11月オープンワーク副社長に就任、20年4月より現職。

(日経転職版・編集部 木村茉莉子)

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