円安に歯止め感? 食料・エネルギーの国産化に期待
マネックスグループ社長 松本大氏(17)
ビジネスの視点一方、製造業は昔に比べれば海外生産が増えたと言われますが、そうは言っても日本はやっぱり大きな国なので、案外、国内で作っているものも多く、それが海外で売れています。例えば車。国内では値上げが嫌われるのであまり売れていませんが、米国などでは「こういう時代だから、値上がりするのは当然」と受け止められて、結構売れています。だから、日本で作ったものをせっせと海外に輸出している製造業はもうかっています。
つまり、円安が進むにつれて、全体としては輸入が減って輸出が増えてくる。すると円が買われドルが売られやすくなりますから、円安是正効果が生まれてくる。ですから今後、底が抜けるように円安が進むという事態は起きにくくなっているのではないか、というのが私の見立てです。まぁ、私は生まれながらの楽観主義者でもあるので、そういうふうにポジティブに考えています。ただ、もちろん個人としては、急激な円安への備えとして、ドル資産を持っておくなどの対応はしておいた方が良いでしょう。
給料が上がる機運も高まりつつある?
では、日本経済全体は今後どうなるのか。鍵となるのはやはり給料が上がるかどうかでしょう。日本はもともと個人金融資産が潤沢で、さらにコロナ禍で補助金がたくさん支給されたため、個人のバランスシートは良くなっています。そのおかげで今は物価上昇になんとか耐えていますが、それがいつまでも長続きするはずはありません。やはり物価上昇に見合うように給料が上がってくることが非常に重要です。
現状ではまだその動きは弱いですが、少しずつ機運は高まっているようにも見えます。先般の株主総会シーズンでは、個人株主側から「給料をちゃんと上げているか、上げるつもりがあるか」という質問がかなり多く出されていましたし、政府も盛んに賃上げの必要性を強調しています。円安でもうかった輸出企業がまずは給料を上げ、その動きが日本全体に広がって、デフレから適度なインフレに転じること。その中で経済の好循環が生まれてくることを期待したいですね。
ところで、世界に目を向けると、多くの国でインフレの嵐が吹き荒れ、各国の中央銀行が利上げに躍起になっています。インフレを抑え込むことができなければ、インフレと景気後退が同時に進む「スタグフレーション」に陥るのではないか。そんな懸念も高まっています。ただ、例えば日本と比べものにならないほど急激な物価上昇が起きている米国で、景気後退が起きるかというと、私はあまり心配していません。最近、私は現地に出張しましたが、自分の肌感覚としてもそう感じました。