トップは暇でないと! 灘高出身、異色のDX起業家
キャリアコラムDXプラットフォーム推進会社も次々発足

ブループリント共同創業者の安田さん(左)、鶴岡さん、石井さんと同社CEOの竹内さん(右)
一方で顧客側から「業界ごとに商習慣や業務プロセスが異なる。1社でDX化しても意味がない。取引や顧客先もDX対応していないと回らない」と指摘された。そこで業界や用途別にDX化を推進する事業会社を立ち上げることにした。
グループの持ち株会社のブループリントを発足。その傘下にスタンダード以外にスタートアップ3社を立ち上げた。まず建材業界向けにDXプラットフォーム推進の会社をつくり、LIXILやYKK APなど建材大手を顧客先として事業展開を始めた。
ブループリントや各社の経営陣には、キーエンスやリクルート、大手コンサルなど出身の30歳前後の有能な人材を充てている。ブループリントCEOの竹内将高さんはキーエンスの敏腕営業マンだった。安田さんは「営業や開発、財務はぞれぞれのプロに任せています。うちは資金力もあるので高額な報酬も支払え、有能な人材を確保できている」という。
キーエンス出身者がトップの事業会社の営業担当者は全員スーツ姿で出社している。他のスタートアップ企業とは違う雰囲気だが、現場のトップに権限委譲しているので、自分たちは細かく口出しをしないという。
創業者3人は持ち株会社で、グループ全体の戦略や新規事業を考え、事業別にスタートアップを次々設立し、各社はプロ人材に委ねるモデルを確立した。グループは黒字経営を継続し、立ち上げた会社の従業員数は150人を超えた。
「我々は創業時から投資家に頼らず、独立資本でやってきたので、誰からももっと仕事をしろとか、上場しろとか干渉されない。ただ1~2週間、暇にしていると、次の事業がやりたくなる。みんなと色々話せるし、アイデアもわく。トップは暇は大事だ」と笑う安田さん。ゼロワン型の起業家と思えぬ余裕だが、このビジネスモデル構築の背景には灘時代の体験があるという。
神童ばかりの灘中、株投資に活路
「微積は全部終わったわ」。灘中学1年の頃、同級生で通学仲間だった前田智大さんがこう話しかけてきた。微分・積分は高校の数学で学習する範囲だが、灘にはこの手の「神童」が少なくない。前田さんは高2で国際生物オリンピックの銀賞に輝き、米マサチューセッツ工科大学に進学、現在は「スコラボ」と呼ぶオンライン教育サービスを展開している。
勉強ではかなわないと思った安田さんは、小学校時代に全国20位に入った水泳で存在感を示そうと考えたが、「水泳部には全国2位の先輩もいた。部長は水泳もトップクラスだし、東大の理三(医学科コース)に現役合格したイケメン。灘は強烈なタレントぞろい。自分は何で勝負しようかと焦った」。