トップは暇でないと! 灘高出身、異色のDX起業家
キャリアコラム本屋でふと目にとまったのが『女子高生でもできる』と銘打った株投資の漫画本だった。「これや」と思って、お年玉を崩して株の投資を始めた。祖母が薬局を経営していたので、まず製薬業界の企業の株投資を開始。「決算書とにらめっこしながら、業績のほか、新薬開発のパイプラインなどを見て、どうしたら株価が上昇するのか、経営者目線で考えた」という。
株投資を通じて多くの大企業の基本データが頭に入っていたので、起業時に上場企業の役員たちとも普通に対話できたわけだ。「学生なのに会社のことをよく知っているね」と驚かれたという。
「任せる経営」を灘の仲間に学ぶ

灘高出身のDX起業家、安田光希さん
もう一つ、灘時代に知ったのは多様で優秀なタレントの存在。学業以外にスポーツや芸術、デジタル分野でも大人顔負けの活動を展開する生徒がたくさんいた。「自分1人で頑張っても勝てない。それぞれの分野で優秀な人材に任せた方が得だということが分かった」。20代で「任せる経営」が身についたのも、多彩な才能と触れ合っていたからだ。
多くのスタートアップは赤字覚悟で市場創出を目指す会社が少なくない。結果、8割方の起業は失敗する。しかし、「我々は、BtoB分野で失敗しないスタートアップを量産してゆく」という。すでに顧客を確保し、収益の見込みが立った後、リスクを最小化して事業会社を立ち上げる「起業の標準化」を進めるという。
その軍資金を得るため、立ち上げてきたスタートアップの株式の一部を事業会社やベンチャーキャピタル(VC)に売却し、累計で17.8億円の資金調達をした。現在のDX支援事業を拡大し、ディープテックなどの新領域のスタートアップ創出にも取り組む。
灘高出身者は、医師や研究者、官僚・法曹などの分野で活躍する卒業生が目立つ。ただ最近は安田さんのような若手起業家も増えている。各界の人材ぞろいの灘OBから「あいつ、やばいな」と呼ばれる存在となってきた。
(代慶達也)