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AIの活用は学びの分野でも急速に進み、スタートアップ企業が続々と登場してさまざまなサービスを世に出している。そんな中で、「記憶の定着」のためのプラットフォーム「Monoxer(モノグサ)」を提供するモノグサ(東京・千代田)が存在感を高めている。学校や塾、予備校での導入が相次ぐほか、最近は従業員のスキルアップに活用する企業も出てきている。「AI時代は、知識を記憶することより情報を活用・思考する力の方が大事」などと言われるが、なぜ今、逆に「記憶」が大事なのか。東大大学院でコンピューター科学を専攻後、グーグルを経て同社を起業した代表取締役CTOの畔柳圭佑氏に聞いた。

――AIの目覚ましい発展で「いちいち覚えなくてもAIに聞けばいい。記憶力より情報の活用力や思考力の方が大事だ」といった声も聞きますが、どうお考えですか。

私の答えはNOです。どんな時代が来ようと基礎的な知識、つまり記憶を通して自分のものにした知識がなければ、情報を活用することはできません。例えば「DX」という言葉の意味はChatGPTですぐに調べられますが、それだけでは、実際にDXを自分の仕事に生かしていくことはできません。

AIへの指示に必要な土台

AIによって私たちの仕事のありようは大きく変わっていきます。これからは多くの人が、AIに指示を与え、返ってきた回答について判断し、意思決定をする立場に置かれるでしょう。そしてAIにどんな指示を与えるのか、回答をどう判断するかによって、最終的なアウトプットの中身や精度が変わってきます。

指示や判断の土台となるのは、周辺領域に対する知見や関連する知識です。それらの知見や知識は、記憶を通して自分の血肉になっていなければ、いざ指示や判断をする際に使うことはできません。

また、いま「リスキリング」の必要性がさまざまなところで言われていますが、時代が激しく変化する中では、常に新しい情報にキャッチアップし、それらを素早く、正しく記憶し、身につけていく必要があります。私はAIの時代にこそ、記憶の重要性が増していくと考えています。

理解は記憶の組み合わせで実現

――「暗記するよりも理解することが大事」とも言われますが。

そうですね。それも記憶に関するよくある誤解の一つですが、「記憶」と「理解」は別物ではありません。私自身は記憶とは「人が後天的に脳の中で蓄えた情報」と捉えています。そして、理解は記憶の組み合わせによって実現されるものです。

数学でも歴史でも、公式や年号など表層的なものだけを記憶するのではなく、公式の元となっている考え方や、出来事の背景となった要因にも注意を向けながら記憶しておく。その積み重ねが理解を深めることにつながります。

物事の理解には、あやふやな記憶ではなく細部までのしっかりとした記憶と、必要な時に取り出せる記憶が不可欠です。

――判断や意思決定以外に、イノベーションにも記憶は必要なのでしょうか。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、一見関係がないように思える点と点が、後からつながってイノベーションを生み出すことを、「Connecting the dots (コネクティング・ザ・ドッツ)」と表現しました。革新的なアイデアを生むためにどういう点=要素を記憶しておけばいいのかを、前もって予測できればいいのですが、残念ながらそれはできない。だからこそ、過去に学んだ知識や経験をしっかりと記憶し、自分の中にとどめておけるかどうかがカギを握るのです。

それだけではありません。自分が思いついたアイデアが本当に革新的なのかどうかを判断するにも記憶の蓄積は必要です。注目を集める分野であればあるほど、多くの人がイノベーションを生み出そうとしのぎを削っていますから、いち早く実用化を判断できるかどうかで、得られる利益も変わってきます。

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