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転職にも有効な方法は?

転職エージェントとして、企業からコーポレート人材ニーズをお聴きし、実際の転職成功事例を見ている立場から、有効と考えられる方法をお伝えします。

●「事業の現場」を経験する

コーポレート部門のハイキャリア~エグゼクティブ層の経歴を拝見していると、「経理一筋」「人事一筋」といった方は少なく、どこかのタイミングで「事業側」を経験していらっしゃいます。

営業やマーケティングなどを経験している。あるいは、専門は「経理」「人事」などであり続けたとしても、子会社への出向や海外拠点のマネジメントなどで、「事業運営」も兼務した経験を持っていらっしゃるのです。

要は、「市場に対峙する」という現場経験が、経営や事業を俯瞰するためには必要であるといえるでしょう。

ですから私は、子会社出向などのチャンスがあれば、率先してつかみに行くことをお勧めしています。

直近では、コロナ禍でしばらく停滞していた「海外事業」が再び動き出しつつあります。海外子会社のマネジメントのニーズは高まると予想されますので、興味がある方はチャンスにアンテナを張っておいてください。

子会社管理のほか、営業・マーケティング・企画などを経験するのも有効ですが、コーポレート部門からそれらの部署に異動し、再びコーポレート部門に戻るのは、多くの方にとっては現実的ではないでしょう。その場合、お勧めするのが「副業」です。

例えばスタートアップやベンチャー、NPOなどに専門スキルを提供しつつ、「事業」の現場にも関わっていく。「対・顧客」「対・社会」の考え方、動き方を体験してみてはいかがでしょうか。

●デジタルの知見・リテラシーを身に付ける

世間で騒がれている「DX」を、「デジタルのスペシャリストに任せるもの」と思っていたとしたら、それは間違いです。

既存のオペレーションをデジタルに置き換えるに際しては、既存の仕組みの見直し・改善の検討が欠かせません。それを担うのはコーポレートスタッフ自身です。

実際、経理・財務や人事などの採用においては、「システム導入プロジェクト」に関わった経験など、ITリテラシーが歓迎される傾向が見られます。

これからの時代、デジタル化は避けて通れませんので、そのマインドを備え、デジタルの基礎知識を学ぶことをお勧めします。最近は、オンラインセミナーなどで手軽に学べますので、ご自身の専門領域ではどのようなデジタル活用が進んでいるのか、キャッチアップしておくといいでしょう。

●最新の法令・ルールをキャッチアップする

先ほど挙げた「コーポレートガバナンス・コード」もそうですが、コーポレート業務は法令やルールの変化にすばやく対応していく必要があります。

業界のセミナーなりSNSなりを活用し、常にアンテナを張ってアップデートしていきましょう。

人事領域においては、「人的資本の開示」が旬なテーマとして議論が進んでいます。この連載でも以前にご紹介しましたので、こちらの記事「企業が戦略人事の採用を活発化 人材を資本に」を参考にしてください。このような学びを独自で進め、得た知識を現在の職場で実践していくといいでしょう。

まだ意識が低い職場であれば、自ら提言し、新たなプロジェクトを起案して自ら推進してはいかがでしょうか。

その経験は、いずれ転職をすることになった場合、必ず生かされます。

ただし、自社では依然として「管理」だけを求められ、提案しても取りあってもらえない場合、転職を選択する道もあります。

コーポレートスタッフの採用では、戦略を立てられる人材が求められていますが、需要に対して人材の数が非常に希少であるマーケットです。ですから、専門分野の実務経験・スキルを持ち、かつ上記のような取り組みへの意識が高く、独自に学んでいる方であれば受け入れられる可能性があります。

実際、コーポレート部門未経験でも、感度が高い20代後半~30代の方が採用されているケースがあります。例えば、コンサルティングファーム、金融機関、商社などで「事業」「経営」を学んだ方が、コーポレートスタッフとして転職を果たした事例も多くあります。

これまでの「管理部門」への固定観念を取り払い、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

森本千賀子
 morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「マンガでわかる 成功する転職」(池田書店)、「トップコンサルタントが教える 無敵の転職」(新星出版社)ほか、著書多数。

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