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昨年6月、最高裁は夫婦同姓を定めた民法などを「合憲」と判断し、問題を司法の場ではなく、国会で議論するよう求めた。この30年、国会での議論は進まなかった。背景には、夫婦別姓を認めると家族の一体性が失われる、子供に悪影響がある、との根強い反対論がある。だが、別姓が普通のことと受け止められている社会では、このような問題は起きていない。

多くの人にとって、名前はアイデンティティーそのものだ。女性が結婚によって名前が変わると実績もリセットされ、キャリアでも男性に対してハンディを負うことになる。事実婚を選べば、相続権がない、税務上の控除が受けられない、代理人として医療行為への同意ができないことがあるなど重大な問題が生じる。

旧姓の通称使用を広げればよいとの意見もあるが、旧姓には法的根拠がない。本人や企業、行政にとってコストや事務負担も大きい。旧姓が認められる書類と認められない書類などがあり、混乱が生じている。

夫婦同姓の強制は、個人の尊厳や人権に関わる問題だ。ジェンダー平等の視点からも、夫婦の事情に応じて姓を選ぶ自由を認めるべきである。

児玉治美
アジア開発銀行(ADB)副官房長。国際基督教大学修士課程修了。国際協力NGOジョイセフにて東京本部やバハマに勤務した後、2001年から国連人口基金のニューヨーク本部に勤務。08年からADBマニラ本部に勤務。19年から21年までADB駐日代表を務めた後、21年10月から現職。途上国の子どもを支援するプラン・インターナショナル・ジャパン評議員。
[日本経済新聞朝刊2022年8月22日付]

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