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男性育休「役割分業防ぎ、キャリア継続に活用を」

管理職を希望しない理由として「私生活と両立できない」「残業時間が増える」との回答が多く、「管理職への成長機会がなかった」が続いた

上林さん「男性育休に関する法改正により、夫婦で交代で育休を取得することができるなら社会的意義が深まりそう。一般的に、女性が育休を取得している間に、妻が育児・家事の主体で夫はあくまでもサポーター、という状態が定着して子育て終了まで続いていく場合が多い。夫が、妻のいない家で育児や家事をする期間を設けることで、その後の『夫が仕事、妻が家庭中心』という役割分業を防ぎ、互いにキャリアを目指しやすくなる」

Cさん「そもそも、管理職制度は会社に対して、いつでも何でもできる人であることが大前提。多様性が重要な時代に、やせ我慢しがちな人しか意思決定に参加できないのはおかしくないかな。私も意思決定に参加したい」

Aさん「業務時間外に割ける時間が男性社員と違うから、機会をつかみ取れない側面もある。勤務先企業では管理職になるための試験がある。勉強時間に相当費やし、グループワークや面接、試験がある。対策は業務時間外でやる必要がある。それは育児をする女性にとっては厳しい。業務時間の一定時間を自己研さんに充てる制度は一助になるかもしれない」

写真はイメージ=PIXTA

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「賃金差や評価制度、見直し必要」

自社の女性活躍推進策に「効果を感じない」と答えた人は55.6%。会社が本当に取り組むべき施策は何だと思うか

Dさん「賃金差の改善だ。同じ年次で比較して、男性の賃金が女性の2倍くらい、という事例も社内である。地域間異動が無い地域限定職を選んだ後に育休が長引き昇進が遅れる、などにより職務内容に大きな差は無くても賃金差が開いていく。転勤できるか否かが一つのハードルになっており、制度の見直しも必要だと感じる」

Bさん「評価制度も見直すべきだ。同じ年次で同じ成果を出した人の評価を考えるときに、その成果を出すためにかけた時間の短さは考慮されていない。なぜか時間単位の生産性は無視されていて、それについてどう思うか上司に聞いても取り上げられない」

「心理的なフォローも大事。上司と部下とが、本音で話し合いやすい環境が必要だ。人事評価にかかわるようなプロジェクトで、出産適齢期の女性社員に配慮してあえてチームから外す上司もいる。でも、本人はキャリアも大事にしたくてミスマッチになっている。意見を言い合える関係なら、希望を双方で確認しやすい」

企業と女性、意識にズレ


帝国データバンクが8月末に発表した企業調査で、女性管理職割合の平均は9.4%と過去最高だったが、まだ1割にも届かなかった。

企業側と女性側で意識にずれがありそうだ。同調査で企業に女性活躍推進策を聞いたところ、トップは「性別にかかわらず成果で評価」で59.4%、次点が「性別にかかわらず配置・配属」(47.0%)だった。しかし、今回の座談会では「評価に生産性が考慮されていない」「評価は平等でも資格取得の時間が取れない」など、制度自体の欠陥を指摘する声が上がった。評価者が人間である以上、「適齢期だから育休に入るかもしれない」との想定による配置など何らかのバイアスからは免れない。

パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員は「女性への好意的な差別によって、管理職になるにあたって重要な、『修羅場経験』が男性に偏ってしまう」と指摘する。評価制度を不断に見直すことや女性社員の育成など、課題は多い。
(田中早紀)
[日本経済新聞朝刊2022年9月26日付]

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