通商政策への思い、ぶれずに進む
東京大学公共政策大学院教授・宗像直子さん(折れないキャリア)
キャリアコラム01年から3年間、米シンクタンクなどでアジア政策を研究し「関税を下げられない呪縛の中にいると世界の流れに取り残される」との危機感があった。一方で参加すれば「21世紀のルール形成を日本が主導できる」という期待もあった。
省内で協力してくれる人もいて、有志を募り小さなグループで検討に着手した。倉庫内でほこりをかぶっていた机と椅子を小さな部屋に並べ、雑巾で拭くのが最初の仕事だった。いつか政治の判断を仰げるように、論点や課題を整理しておくのが行政官の仕事。議論に向き合ってくれた人たちの力を得て、13年のTPP交渉の参加表明につながり、15年の大筋合意に結実した。
首相秘書官や女性初の特許庁長官を務め、19年に退職した。21年からは東大院の教授として経済安全保障などをテーマとした社会人講座を手掛けている。行政官として積み重ねた濃密な経験が今も生きている。
(聞き手は広沢まゆみ)
[日本経済新聞朝刊2022年9月26日付]