「D&Iをやって、経営が上向くのか?」と言われたら
D&I、ジェンダー平等入門(5)
ダイバーシティ投資に関する専門家の分析は…?
ジェンダー・ダイバーシティに優れた企業群に投資するファンドの株価が、日本株市場を代表するTOPIXに比べて、2018年ごろからパフォーマンスを伸ばしている点について、投資に関する専門家は2021年の取材で次のように分析しています。
「市場全体に幅広く投資するユニバーサルオーナーと呼ばれる機関投資家は、企業が持続的に収益を上げられるかどうかを見ている。彼らにとってダイバーシティは重要なファクターの1つだ」
(MSCIクライアントカバレッジ エグゼクティブ ディレクター・杉原龍馬氏)
(MSCIクライアントカバレッジ エグゼクティブ ディレクター・杉原龍馬氏)
「女性の活躍の場が増えれば、それだけ企業内に埋もれていた優秀な人材を発掘できる。過去において女性管理職の割合が多い企業ほど、強く成長していたことは疑いようのない事実だ。世界各国の年金基金など、多くの機関投資家がこの考え方を取り入れているため、女性活躍度で劣る企業の株価は上がりにくいという状況がすでに生まれているわけだ。特に2015年ごろからは、ESG投資のブームが株価に強く影響を与えるようになり、それが女性活躍が進んだ企業の株価を押し上げていることは間違いない。このESGを構成する要素の中に、ジェンダーの平等も含まれる」
(智剣・Oskarグループ主席ストラテジスト・大川智宏氏)
(智剣・Oskarグループ主席ストラテジスト・大川智宏氏)
杉原氏や大川氏の発言から、巨額の投資金を扱う機関投資家たちが、ESG投資の軸の1つである「ダイバーシティ、ジェンダー平等」を重要な指標として投資している結果、株価によい影響が出ていることが分かります。
◇ ◇ ◇
「D&Iをやって、もうかるのか」という問いに対する情報は、これまでさまざまな業界で分析がおこなわれてきました。次回は、ヘッジファンドの運用結果に焦点を当てた分析を紹介します。「本当にもうかるの?」という率直な質問への答え探しに、別の角度から深掘りしていきたいと思います。
(構成 日経xwoman編集部、写真 Aiko Suzuki、イメージイラスト=PIXTA)
羽生祥子

日経クロスウーマン客員研究員。京都大学農学部入学、総合人間学部卒業。2000年に卒業するも就職氷河期の波を受け渡仏。帰国後に無職、フリーランス、ベンチャー、契約社員など多様な働き方を経験。編集工学研究所で松岡正剛に師事、「千夜千冊」に関わる。05年現日経BP入社。12年「日経マネー」副編集長。13年「日経DUAL(当時)」を創刊し編集長。18年「日経xwoman」を創刊し総編集長。20年「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」始動。内閣府少子化対策大綱検討会、厚生労働省イクメンプロジェクトなどのメンバーとして働く女性の声を発信する。22年羽生プロ代表取締役社長。
