人や組織をかけ合わせる共創 つくり方をモデルで示す
青山ブックセンター本店
ビジネス書・今週の平台
26日までは特設ワゴンに関連書とともに並べて展示した(青山ブックセンター本店)
ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は年数回訪れている準定点観測書店の青山ブックセンター本店に、前月に続いて訪れた。ビジネス書では初めから大きく売れるような話題の新刊が乏しく、前週のベストセラーを並べた棚もいくぶん新鮮味に欠けてみえる。そんな中、書店員が注目するのは、多くの関係者を巻き込む共創型の社会課題解決プロジェクトのつくり方を、その設計図のつくり方・使い方とともに解説した本だった。
共創プロジェクトの設計図
その本は吉備友理恵・近藤哲朗『パーパスモデル』(学芸出版社)。著者の1人、吉備氏は日建設計イノベーションセンターに勤める1993年生まれの若手プロジェクトデザイナー。「社内外をつなぎ共創のきっかけをつくる仕事をしながら、一般社団法人で共創の研究に取り組んでいる」という。その仕事を通じて開発したのが本のタイトルにもなっている「パーパスモデル」だ。共著者のビジュアルシンクタンク、図解総研代表の近藤氏はその開発に力を貸した。
パーパスモデルとは何か。「パーパスを中心にした共創プロジェクトの設計図」と本書は定義する。パーパス、すなわちプロジェクトの共通目的を中心に、そのプロジェクトの関係者(ステークホルダー)を円上の外側に並べて配置し、中心に向かってそれぞれの役割、個々の目的を書き入れた図だ。図の上段には共創に関与するステークホルダー、図の下段には主体的な共創パートナーを配置し、企業、行政、市民、大学・研究機関・専門家という4つの属性別にステークホルダーを色分けすることもポイントだ。
このパーパスモデルを使うことで、プロジェクトのパーパスと、そこにどんな人や組織がどんな理由でどう関わっているかが一目でわかる。人や組織をかけ合わせて進む共創型のプロジェクトは、いろいろな意見が飛び交って方向性が見えなくなったり、本来の目的を見失ったりして頓挫することも多い。そんなときにこのパーパスモデルがコンパスになる。パーパスを共有したり、個々の役割や目的を確認し合ったり、新たなステークホルダーを見いだしたり、パーパスモデルをもとに考えや施策を深めることができるのだ。