書店員おすすめ この夏読んでおきたいビジネス書10冊
ビジネス書・今週の平台経済学のビジネス実装に注目

三省堂書店有楽町店の岡崎史子さんのおすすめは『使える!経済学』と「『失敗の本質』を語る」
三省堂の岡崎さんのもう1冊のおすすめは、新刊の日本経済研究センター編『使える!経済学』(日本経済新聞出版)。経済学がビジネスや社会課題の解決の現場で活用されるようになってきた実際を、8人の経済学者が語った内容だ。不動産オークションへの実装を手がけた坂井豊貴慶応大学教授、新型コロナウイルス感染対策と社会・経済活動の両立に経済分析を生かす仲田泰祐東京大学准教授ら自ら実装に取り組む学者による連続セミナーを書籍化した。
「学知とビジネスのつながりが実例に則して語られていて、抽象的に思えていた学問が身近に感じられてくる。読めばどんな応用ができるか自分のビジネスを見直したり新規事業を構想したりするヒントになりそう」と話す。仕事から一歩離れたところにある学問や研究から刺激を受けてみよう。岡崎さんおすすめには、そんな思いが感じられる。
今改めて『ブラック・スワン』を

八重洲ブックセンター本店の川原敏治さんのおすすめは『ブラック・スワン』と『13歳からの地政学』
「長めの休みなら大著に挑戦してみるのもいい」。八重洲ブックセンター本店の川原敏治さんがすすめるのは、刊行から10年以上たつナシーム・ニコラス・タレブ『ブラック・スワン』(上・下、望月衛訳、ダイヤモンド社)だ。原著は2007年に刊行され、大きな話題になった本で、ロングセラーを続ける(邦訳は09年)。ブラック・スワンという言葉自体、誰も想定していなかった出来事が世界を一変させてしまう現象を指す言葉として当たり前に使われるようになった。
「VUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代とかいわれるが、そんな世界についてさまざまに思索をめぐらせた本。なお収まらない新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻が続く今こそ、改めて読んでおくといいのでは」と話す。
もう1冊のおすすめは、田中孝幸『13歳からの地政学』(東洋経済新報社)。「地政学の本はいろいろと出ているが、世界についてのさまざまな見方を小説形式でわかりやすく語っていて、とても読みやすい」とおすすめの理由を話す。
高1の大樹とその妹で中1の杏が、カイゾクとあだ名されたアンティークショップを営む老人から「地球儀を使って、世界がどのように動いているか一緒に考えてみよう」と、7日間のレッスンを受ける。1日目は「物も情報も海を通る」、2日目は「日本のそばにひそむ海底核ミサイル」……。老人と2人の軽妙な会話を通して世界の見方が少しずつわかっていくしかけだ。読みやすさについ引き込まれて読み進めると、意外なほど多様で深い世界の見方が手に入る。