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名著に新訳「今こそ読みどき」

紀伊国屋書店大手町ビル店の桐生稔也さんのおすすめは『歴史とは何か 新版』と『Slowdown 減速する素晴らしき世界』

紀伊国屋書店大手町ビル店の桐生稔也さんのおすすめは『歴史とは何か 新版』と『Slowdown 減速する素晴らしき世界』

紀伊国屋書店大手町ビル店の桐生稔也さんは「先行きの見えない現代に光を見いだすことのできるような2冊」として、名著と新刊からそれぞれ1冊を選んでくれた。名著の方はE・H・カー『歴史とは何か 新版』(近藤和彦訳、岩波書店)。社会学者の清水幾太郎訳の岩波新書青版(62年刊)で長く読み継がれてきた名著だが、英国近世・近代史を専門とする歴史学者の近藤氏が現代の読者にも親しみやすい訳文にして新版としてこの5月に刊行された。新しい衣をかぶった名著である。

「"過去は現在の光に照らされて初めて知覚できるようになり、現在は過去の光に照らされて十分に理解できるようになるのです"の言葉が印象的。訳注や解説がたいへん詳しくなっているので読むなら今だと思います」というのが桐生さんの推薦の弁だ。

新刊の方はダニー・ドーリング『Slowdown 減速する素晴らしき世界』(遠藤真美訳、東洋経済新報社)。英国の地理学者の著作で、独立研究者の山口周氏による巻頭解説の言葉を借りれば、「さまざまな統計データを用いながら、ごく少数の例外を除いて、世界におけるありとあらゆるものはむしろ減速している」ことを示した本だ。「人口、テクノロジー、イノベーション、果てはコーヒーの消費量等といった項目についてまで」スローダウンしていることを示し、そのことを「ポジティブにとらえている、というのが本書のポイント」という。

「日本そして東京がその先頭に立つ存在として評価されていることもあってか、未来予測の本として大手町ビル店でも人気があり、売れている」と桐生さんはいう。加速時代が終焉(しゅうえん)を迎えているとすれば、どのような生き方が望ましいのか、そのときビジネスはどのようなビジョンを持って進めるべきなのか、深く考えさせられる本だ。

社会課題の「見え方」変える発想とは

青山ブックセンター本店の本田翔也さんのおすすめは『笑える革命』と『問いかけの作法』

青山ブックセンター本店の本田翔也さんのおすすめは『笑える革命』と『問いかけの作法』

青山ブックセンター本店の本田翔也さんは、「ビジネスを通じた社会課題の解決への関心が高まってきているように感じる。そんな流れの中での実践を具体的に考えさせてくれる本」として、小国士朗『笑える革命』(光文社)をすすめてくれた。4月に同書店を訪れたときにも売れ筋の本として本田さんが注目していた本で、〈社会課題の見え方変える 「笑える」プロジェクト発想〉の記事で紹介した。

認知症の状態にある高齢者らがホールスタッフを務めるイベント型レストラン「注文をまちがえる料理店」など、「笑えない社会課題」の見え方がぐるりと変わるプロジェクトを数々企画してきたプロデューサーによる自らの実践例の解説書だ。小国氏が選んだ関連書と同書を合わせて並べた特設の平台が3カ月たっても健在で、関連書も含めて今もよく売れているという。

もう1冊には、こうしたプロジェクトも含めてチームで仕事をする中で、どうすれば個々の魅力を引き出しチームのポテンシャルを最大限に発揮できるか、その技法を解説した安斎勇樹『問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を選んでくれた。ファシリテーションの研究者でもあり、組織の創造性を引き出す支援を手がける起業家でもある著者が、研究と実践の成果を実践書に落とし込んだ本だ。

「問いかけとは、チームのポテンシャルを照らす『スポットライト』のようなもの」といい、良い問いかけの行為のサイクルを解き明かし、その作法を細かく解説する。「チームの力に注目した本はいろいろ出ているが、この本が提示する技法は新しさがあって、実際に試してみたくなる内容が詰まっている」と本田さんは話す。

(水柿武志)

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