コンサルとして生き抜く 激務体験が導くサバイバル術
丸善日本橋店
ビジネス書・今週の平台
1階入り口近くの新刊や話題の本を集めた書棚の平台に4列並べて展示する(丸善日本橋店)
本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。今回訪れたのは丸善日本橋店だ。
東京駅にもほど近い同店の周りには八重洲・京橋・日本橋といった有数のオフィス街が広がる。人出が戻ってきたことに加え、近くの大型書店、八重洲ブックセンター本店が閉店したこともあってか、ビジネス書の売り上げは前年同月を上回る勢いだという。そんな中、書店員が注目するのは、外資系コンサルティングファームに12年間勤務し、シニアマネージャーまでのキャリアを経験した著者が体験を通して得た業界を生き抜くスキルや作法、考え方を言語化した一冊だった。
外資コンサル12年の苦闘の日々
その本はメン獄『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』(文芸春秋)。本書の略歴によれば、著者のメン獄氏は2009〜21年、外資系コンサルティングファームに勤務し、現在は医療DX(デジタルトランスフォーメーション)のスタートアップでDXコンサルタントとして働いている。
22年1月、コンテンツ投稿サイトのnote(ノート)に掲載した同名のマニュアルが話題になり、これに大幅な加筆・修正をして書籍化したのが本書だ。激務というしかないハードワークを続け、何度となく挫折を繰り返しながら仕事での成長を遂げた記録でもある。働き方改革以前の、コンサルティング業界のすさまじい働き方の実際が描かれるが、それを告発しようというのではない。
そうすることによってしか得られなかった成長の軌跡が本書には刻みつけられている。高い能力の一方、一癖も二癖もある個性的な先輩や上司たちの、仕事師としての魅力が活写される。今ではパワハラと認定されるであろう上司や先輩からの徹底した仕事の詰められ方やきついひと言……マニュアルというには重すぎる体験談を読み進めることになるが、サバイバル術はそこから導き出されていく。マニュアルとして読むならそうしたスキルを重点的に読むのもいいし、1人のコンサルタントの苦難に満ちた成長物語としてノンフィクションノベルでも読むように味わってもいい。