吉本新喜劇初の女性座長 「男性にはできひん笑いを」
吉本新喜劇座長・酒井藍さん(折れないキャリア)
キャリアコラム2017年に30歳で吉本新喜劇の座長に就いた。初の女性座長だ。
就任を伝えられたときは、喜びと共に不安が押し寄せた。だが「藍ちゃんなら成し遂げると思っていた」。泣いて喜ぶ先輩の女性芸人を見て覚悟を決めた。吉本新喜劇の座長は複数いるが、常に全員男性だった。「お笑いの世界は男性社会。でも女性が注目される新喜劇になる」――。
子どもの頃からの新喜劇ファンだ。「テレビの中に入って一緒にお芝居できひんかな」。高校卒業時に親へ吉本総合芸能学院(NSC)入りを相談した。返ってきた言葉は「何アホなこと言うてんねん」。
でも諦めきれない。「公務員になって親を安心させ、油断したところで新喜劇に入ってやる」。専門学校を経て奈良県警に就職。1年半勤めた後、入団オーディションに合格し、夢をつかんだ。

さかい・あい 2006年奈良県警入庁。07年に吉本興業に入社し、吉本新喜劇に入団。17年から現職。
入団直後は男性芸人との差に悩んだ。一つはボケの力強さ。「同じ芸でも自分だとパワーが半分」。ハキハキとした発声、豊かな表情に芸風を変えた。周囲も親身に相談にのってくれた。先輩の小籔千豊さんに渡された台本は、セリフが空欄だった。「ここは藍ちゃんが考えて思い切りボケてみて」。攻めの姿勢で笑いをとる。教えに必死に食らいついていった。
「新たな風をふき込んでくれるとの期待を込めて」――。入団して丸10年で座長を任された。仕事は公演の台本制作や座員への演技指導など、いわば新喜劇の司令塔。座員との信頼関係が何より重要だ。