AI時代の課題特定スキルとは? 米国企業の事例も紹介
職種&スキルの図鑑2つの問題解決アプローチ、それぞれの強みは?
これまでの問題解決アプローチの強みは、発生頻度の低い事象や入手できるデータが少ない場合でも、人間がすでにもっている知識や経験から類推するなどして仮説を立てやすいことです。さらに、あらかじめ人が思考しやすいデータに絞り込んでいるため、原因と結果の間にある因果関係を説明しやすいことも強みとして挙げられます。
一方、AIデータ時代の問題解決アプローチで強みとなるのは、人が処理できない量のデータや隠れた特徴・関係性をモデル化して学習できること。これまでは職人技でしか扱えなかったことも、ディープラーニングなどのAI学習で誰でも使えるようになったり、AIの学習済みモデルを用いれば一連のプロセスを自動化・無人化できるようになったりします。
ただ、AIの予測は100%の精度を達成できるものではなく、原因と結果の間にある因果関係を明らかにするものでもありません。どの程度の精度があれば運用上十分な費用対効果が得られるかという判断は、導入する企業が決断することになります。
新たな問題解決アプローチによって実現する未来とは?
近年のAIの進化が技術の進歩を加速させた代表例に「自動運転技術」があります。10年ほど前まで実現は難しいと思われていましたが、ディープラーニングの出現で一気に進展しました。
電気自動車で有名なテスラは、自動運転サービスを提供する前から、自社製の車両すべてに将来の完全自動運転に対応できるレベルの機器やシステムをあらかじめ搭載することで問題解決を図っています。テスラの全オーナーがAIの学習に必要なデータ収集に一役買っているのです。そしてテスラからは、自動運転のアシスト機能に相当するソフトウェアがオーナーの車へ配信され、その後も不具合が見つかればアップデートによって改善を図るなど、顧客の体験価値を向上させながら完全自動運転に向けた学習を継続しています。

「GLOBIS学び放題」のコース「AI・データ時代のビジネス〜顧客価値の創り方(後編)」より
AI時代の問題解決アプローチの特性を理解して効果的に使い、今まで世の中になかった新しい価値を生み出している事例は他にもあります。
アメリカのCAD(コンピューターによる設計)ソフトウェア会社「Autodesk」が提供する設計ツールは、デザイナーが2つ、3つ制作したデザイン案をもとに、条件を満たす他のデザインをAIが数百案提案してくれるものです。そして、デザイナーがあるデザインを選択すると、AIは最も効率的・実用的な案を考えてさらに提案してくれます。デザイナーはAIからの提案を考慮しながらデザインを絞り込んでいきます。製品設計における人とAIの協働は「ジェネレーティブデザイン」と呼ばれ、近年注目されており、今後幅広い業界へ広がりを見せそうです。

「GLOBIS学び放題」のコース「AI・データ時代のビジネス〜顧客価値の創り方(後編)」より
まとめ
現在もビジネス上の課題のほとんどは、仮説思考的なアプローチで解かれています。これは人が他者と仕事を進める上で、原因と結果の因果関係のような「納得のいく説明」を必要としているからです。
一方、何かを予測するという形の問題であれば、データとAIによる新しい問題解決アプローチが力を発揮できるかもしれません。2つの問題解決アプローチはどちらが正しいというものではなく、それぞれの強みを知った上で使い分ける必要があります。