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DXの専門組織、18の職種を定義

一方、エンジニアに関しては、マイクロソフト社が提供するクラウドサービスMicrosoft Azureのパートナー認定プログラム「Microsoft Azure Expertマネージドサービスプロバイダー」と「Microsoft Azure Networkingマネージドサービスプロバイダー」の認定を日本企業で初めて2つとも取得した。

他にも国防省なども認める「CompTIA(コンプティア)」などワールドワイドの認定資格を積極的に学ばせた。すでにSEの8割以上にあたる486人がCompTIA認定資格を取得済み。エンジニアは徹底的にスキルを磨いた。

さらに17年から約120人でDXの新規事業に取り組む専門部隊を組織化、現在までに450人規模にした。新規事業に取り組むに当たり、AIやUXなど多様なデジタルスキルを磨き、マトリックス評価を実施。DX事業プロデューサーやUXディレクターなど18種の専門性の高い職種を新たに定義した。

16年入社の文系社員がAI教育事業

AI人材などの教育サービスを立ち上げた藤原さん

AI人材などの教育サービスを立ち上げた藤原さん

「自分は何のプロなのかを明確化してモチベーションアップにもつなげた。ここから多くの新規事業が生まれた」(藤長常務)という。このDX組織から、未病から医療まで一気通貫でサポートする今注目のヘルスケアアプリ「HELPO(へルポ)」など19件の新規事業が生まれた。

また、ソフトバンクの社内起業制度から生まれた事業として、22年6月から本格的に提供開始した「Axross Recipe for Biz(アクロス・レシピ・フォー・ビズ)」という企業向けAI・DX人材教育サービスもある。

立ち上げたのは2016年入社の文系SEだった藤原竜也さん。現在はAI戦略室Axross事業課の課長だ。「AI中心に500以上の教材を開発、企業だけではなく高校生向けにコンテンツも提供している」という。23年には東京大学の学生向けにデータハッカソンを開催予定。すでに20社近くの企業が採用済みだ。

中高年社員から自治体のCIO補佐官も

ベテラン社員のリスキリングにも力を入れている。ソフトバンクの法人部門は、JR系通信会社だった日本テレコム出身者が少なくない。50代半ばの社員も多いが、藤長常務は「デジタルスキルを身につけた社員は、全国の自治体から情報関連の要職に迎えられるケースが増えている」という。

同社出身で、宮崎市のCIO(最高情報統括責任者)補佐官は、就任してわずか2カ月で議会のペーパーレス化を実現して地元で評価を受けた。現在、29の自治体で同社出身のIT担当者が活躍している。

これまで市場やメディアの注目は、世界中のデジタル企業に投資を拡大させてきたソフトバンクグループ会長兼社長の孫氏のパフォーマンスばかりに行きがちだ。しかし、中核の事業会社ソフトバンクは、成長戦略「Beyond Carrier(ビヨンドキャリア)」を合言葉にDX人材を育成、最先端技術を活用したソリューション企業に着実にシフトしていた。

(代慶達也)

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