ファイナンスは成長の仕組み 企業価値増やす仕事とは
三省堂書店有楽町店
ビジネス書・今週の平台ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2~3カ月に1度訪れている準定点観測書店の三省堂書店有楽町店だ。まん延防止等重点措置解除からほぼ1カ月、土日の来客回復はより鮮明になった。それでもビジネス書全体の売り上げとなると、新型コロナウイルス禍前には遠く及ばない。そんな中、書店員が注目するのは、若いビジネスパーソンに向けてファイナンス的なものの考え方をシンプルにわかりやすく説いたミクシィ元社長の一冊だった。
マンガと解説でわかりやすく
その本は朝倉祐介『ゼロからわかるファイナンス思考』(講談社)。著者の朝倉氏は2013年にミクシィ社長に就任、1年で業績回復に導いたことで知られる。その後スタートアップ企業を支援するシニフィアン(東京・港)を創業して共同代表を務めるなど、スタートアップ業界で存在感を高めている。すでに『ファイナンス思考』(18年刊、ダイヤモンド社)を著している同氏が〈あらゆる職種のビジネスパーソンに、この「ファイナンス思考」を身につけていただく〉ために書いたのが本書だ。
このため、本書は架空の会社を舞台にしたマンガのストーリーと解説が交互に展開する形で進行する。ファイナンスについて関心や知識がなかった一線の営業マンや投資家向け広報(IR)担当の社員、管理職や社長、大株主が、経営コンサルタントのアドバイスによって少しずつファイナンス思考の知識を身につけ、意識を変えていく様子が描かれる。マンガのストーリーを解説を読みながら追体験することで、ファイナンス思考とは何か、そしてどのように目の前の仕事に組み込んでいくかがわかる構成だ。
著者は「まえがき」の中で「ファイナンス的なモノの考え方こそが、私たちが生きる資本主義のルールそのもの」という。これと対比する概念として、売り上げや利益といった損益計算書(PL)上の指標を最大化することを目的視する考え方を「PL脳」と呼び、これが日本企業の成長を阻害しているとみる。

2階レジ前の売れ筋の新刊ビジネス書や話題本を集めた平台に2冊並べて展示する(三省堂書店有楽町店)