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青井 超絶技巧ですか(笑)。確かに(ピアノ奏者の)リストのように30分の演奏で表現してみろと言われたら難しい。しかし、時間軸の問題ではないでしょうか。短期志向で結果を出せと言われたらしんどい。視野を広げ、時間軸をストレッチしてみて、3~5年かけて、それぞれの矛盾するところを調整すれば、実現可能ではないかと思う。

青井氏は「最低でも10年は社長をやれる人を」と話す

青井氏は「最低でも10年は社長をやれる人を」と話す

伊藤 比較的、長い時間軸で考えようとすると、それを株主やお客様や授業員などが許容できるかどうかにかかっている。対話がキーワードになりますね。例えば、今期、自社株買いを実施するという場合、株主には直接還元されるけれど、この試みが結果的に社員やお客様などにプラスの循環をもたらすという説明ができないといけない。

青井 対話が大事です。対話を通じてストーリーに共感できれば、非常に長い時間軸でも承認してもらえる。今年、この種をまき、芽が出て成長し、何年か後においしい実がなる。そんなストーリーならステークホルダーは納得してくれる。

日本企業の社長任期は短すぎる

伊藤 そうなると、社長の任期が短い企業の経営者には難しいですね。日本の大企業は実際の任期が4~6年というのが多い。

青井 それが問題だと思っている。4~6年の任期を変えないと、あらゆるステークホルダーの利益に配慮する経営など実現しない。当然、ROEとESGの両立など難しい。日本の大企業の場合、トップの任期期間の短さが利益向上とESGを融合する阻害要因になっている。最低でも10年は社長をやれる人を企業の指名委員会は任命してみてはどうかと思う。

伊藤 その通りですね。以前の日本の企業で長くトップをやると、「暴君」が出てきて会社を私物化するケースもあった。しかし、現在は多くの大企業に社外取締役も存在するなど監視体制も整えられている。そのような企業であれば、10年トップをやっても問題ないだろう。若くてエネルギッシュな経営者を選び、ある程度の時間をかけて財務と非財務の戦略を描けば、ROEとESGの両立は可能になると思う。実は非財務の戦略も考えるようになると経営の選択肢が広がる。

青井 まさに経営のストーリーの幅を広げることは大事です。短期的な収益ばかりを気にして、財務に特化した戦略を描くと、盤石だった本業が負け込んだときに打つ手がなくなる。イノベーション(革新)というのはESGなどの非財務の戦略を考えていないと、起こすことはできないからだ。「ウエルビーイング(幸せ)」や脱炭素など環境対策で、いろいろ考えていくと新たな発想やビジネスモデルが生まれてくる。財務重視の企業で「幸せのために」とか言ったら、「何をバカなことを言っているの」と言われる。しかし、今、世界の先進企業ではそこが大きなテーマになっている。

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