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40~50代の幸福度は底辺にある

――どこの国でも40~50代はキャリアや将来に不安を感じているということですか?

外村 世界で世論調査を手がけるギャラップの調査では生活の満足度、幸福度は40~50代を底辺にU字カーブを描くことが分かっているんです。40~50代は、プライベートでは家計のプレッシャーがのしかかったり、子育てや介護の問題が出てきたり、仕事では職場にITや語学に強い若手が出てきて時代に乗り遅れているといった危機感を持ったりする時期です。でも60代以降になるとそれらのプレッシャーから解放されて、心の平穏を取り戻すとされています。

――不安を抱える年代というのは万国共通でも、日本人の40~50代には米国人と比べて努力している人が少ないということですか?

外村 日本人というより、「日本のリーダー層や役員クラスの男性たちには少ない」という印象です。会社でのポジションが上になると、この危機感を覚える人の比率は米国より少なくなるように感じます。「モダンエルダー」になるには、そこにいち早く気づき、行動していくことが大事なんですけどね。

その点、日本の女性たちはすでに有利なスタート地点に立っていると思いますよ。これまでの日本社会で女性が出世するためには、男性たちより人一倍気を使ってこなければいけなかったと思います。それは社会が女性たちに「調整役」を求めてきたからだと考えています。女性の方が得意だからと「間に入って調整してこい」と言われ、難航している話し合いの場で翻訳係を任された経験はないでしょうか。何が問題で、何が起こっていてというのを個々にヒアリングし、本質的な問題を見つけて解決し、うまくつなげ直して動かしていくということをやった経験はないでしょうか。これは若い人には絶対にできないことなんです。

コンピューターやAIに負けない年長者の知恵

外村 日本の女性たちは前述のスキルが特に高いと思っています。これはつらい立場を経験した人でないとできないものなんです。ずっと恵まれた立場にあった人たち、上から目線が許される環境にいた人たちというのは年下に「何があったの?」なんて聞きにいくことはなかなかできないんですよね。

ただ天井のある息苦しい社会で生きてきた日本の女性たちは、自己肯定感が低い傾向にあるので、調整役を務めた経験がスキルになると思っていないかもしれません。でも振り返ってみると「あなたのおかげで問題が解決できたよ」と感謝されたことはありませんか? その経験を「○○な問題を見つけ出し解決し、物事を前に進めた」と表現し直すことで、自分がやってきたことがプラスに感じられるはずです。

これは年長者たちの「ウィズダム(知恵)」というものです。私が解説を書いた『モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方』(日経BP)には、モダンエルダーになるための知恵をブラッシュアップする方法がいくつも書かれていますが、一番共感を得やすいポイントはこの「自分の経験を認識して強みとして表現する」ことではないでしょうか。

私は、日本女性にはとりわけこの「これまで強みと認識されなかった強み」が多いのではないかと思っています。それを2個、3個と増やしていくことがモダンエルダーになる近道だと思っています。

日本はいまだナレッジ(知識)重視の国なので、転職活動をするときなどは持っている資格や仕事の成果などを持って挑むことが多いでしょう。しかし、もうナレッジワーカーは時代遅れです。これからはナレッジではなく、コンピューターやAIに取って代わられないウィズダムが重宝されていく時代。年長者はこのウィズダムを持っているということに気づくことで、自己肯定感が上がり、不安を恐れずに前向きに考えることができると思っています。

――他にもモダンエルダーになるためにできることはありますか?

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