逃げてきた哲学者 なぜ全米トップ進学校の校長に
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スタンフォード大学オンラインハイスクールの星校長は哲学者の顔を持つ
米カリフォルニア州の中高一貫の進学校、スタンフォード大学オンラインハイスクールの星友啓校長。日本で生まれ育った研究者だが、渡米後に哲学で博士号を取得。オンライン中高を全米トップの進学校に押し上げ、注目を集めている。必修科目は自身が専門の哲学。米国で次世代の人材育成に奔走する哲学者の素顔に迫った。
実家は川崎の花屋さん、女子が多いとICU高に
「いつも逃げていたら、ここにたどり着いた」。星校長は自嘲気味に自身の人生をこう振り返る。帰国子女でもなく、東京で生まれ、川崎市で育った。実家は花屋さんだ。小学校時代の成績は極めて普通。中学時代に成績が伸び、国立大学付属の進学校を目指したが、受験に失敗。「女子が多そう」と国際基督教大学(ICU)高校に進んだ。
ICU高校は帰国子女が圧倒的に多く、アメリカンスクールのような雰囲気の学校だ。ここで自由な発想や行動力のある生徒と触れ合う。多くの生徒は系列の大学に進むが、理系が得意だったので東京大学を目指して受験勉強に励んだ。
東大理科1類に合格したが、猛勉強の反動からか、燃え尽き症候群のようになった。目標を失い、授業をサボり、アルバイトとパチスロに明け暮れた。暇つぶしに太宰治などの文学を読み漁った。少し哲学に興味を持つようになり、逃げるように文転した。ただ、専攻したのは、数学的な論理思考をベースとした哲学分野だ。
東大で文転、パチンコ人生から脱し渡米
大学4年になり、仲間たちは次々就職先が決まってゆく。パチンコ屋には通っても、就職ガイダンスの日程も認識していない。「自分を変えたい。じゃ、場所を変えるか」とこれまた逃げるように渡米した。
進学したのはテキサスA&M大学の修士課程。ヒューストン郊外にある巨大なキャンパスには、日本人の姿はほとんどない。もちろんパチンコ屋もない。気が散ることなく、やっと勉強に打ち込めた。恩師に巡り会い、論理学や分析哲学を学んだ。そしてスタンフォード大学で哲学の博士号を取得した。
米名門大で博士号を取得すれば、日本や米欧で研究者として道を歩むのが普通だろう。しかし、博士課程の頃に出合ったオンライン中高での教育者の道を選んだ。
ただスタンフォード大オンラインハイスクールと言われても、ピンとこない読者も少なくないだろう。日本でもN高などネット高校が台頭しているが、そもそも米国の名門大学に系列中高など存在するのだろうか。