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80歳以上の患者の包括ケアも

同センターには総合内科のほか、脳神経外科や麻酔科などにNPがいてそれぞれ重要な役割を果たしている。脳外科ではカテーテル分野などの専門領域で活躍するNPもいる。総合内科科長の鄭東孝医師は「医療の役割は大きく変わっており、NPには新たな役目も期待している。内科の入院患者は、大半が80歳以上の高齢者。治療が終わっても、以前の社会生活に戻るのは難しいケースがある。そこで患者さんの生活能力維持の包括的な役割を担って欲しいと考えている」と話す。

超高齢化社会の医療は変わったと語る、東京医療センターの鄭医師

超高齢化社会の医療は変わったと語る、東京医療センターの鄭医師

人生100年時代を迎えたが、健康寿命を保つのは容易ではない。一度入院すると、筋力が衰え、歩くこともおぼつかなくなる高齢者も少なくない。鄭医師は、「患者の状況を正しく評価して、食事対応やラジオ体操の指導などを手掛けるNPもいる。今の医療は治療して終わりではない」という。

夜勤なく6万円の資格手当 次世代の医療人材に

超高齢化社会の中で、高度なスキルを持ち、医師と看護師、患者をつなぐ役割を果たして自律的に行動できる上級看護師、NPのニーズは高まっているわけだ。役割が大きい分、待遇も悪くない。同センターでは、夜間勤務を課せられず、月6万円の資格手当も支給されている。「一般の看護師だったときは、夜間勤務の連続でつらかったが、NPは昼間の勤務に集中できる。今後も自己研鑽して看護師を指導・教育する仕事をやりたい」と中村さんは話す。

日本国内で就業している看護師の数は128万人(20年時点)といわれる。しかし、NPはまだ600人程度にとどまっている。5年以上の看護師としての経験が必要な上、大学院での2年程度のリスキリングが課せられる。米国のように国の資格ではないこともあり、NPの資格取得が可能な教育機関も、東京医療保健大学など全国の10カ所あまりの医学・医療系の大学院に限られている。

東京医療センターの隣にある東京医療保健大学の大学院で、諸喜田さんや中村さんはNP教育を受けた。

東京医療センターの隣にある東京医療保健大学の大学院で、諸喜田さんや中村さんはNP教育を受けた。

厚労省のある幹部は、「日本の医療界は非常に厳しい状況下にある。1人の専門医を育てるには長い時間と数億円単位のおカネがかかる。国の慢性的な財政難、少子化が進む中、将来的に医師を増やすのは難しい。そこは有能な看護師などとの連携で地域医療を支えてもらうしかない。最近は医師側からもNPの拡充を求める声が上がっているが、国として制度化できるかが今後の課題だ」という。超高齢化社会が進む中、ハイスキル看護師は必要不可欠な存在となりそうだ。

(代慶達也)

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