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「社外逃避」の意味が大きい2つのサイン

経営層・幹部層の転職を支援していると、折々、その相談者の現職企業における内情を細かく聞く機会もあります。その中には、「うちの会社はコンプライアンス的にかなりまずいところがありまして」というものも少なくありません。

特に立場的に、なまじ経営メンバーであったり、社長・経営陣の直下であったりするがゆえに、現場は知らないことでも、いろいろな動きややり取り、事実を見ざるを得ないということが、幹部クラスの場合にはしばしばあります。こうした事情から生じる転職タイミングもあり得ます。

前向きに転職を考えるべきタイミングとして、「社外逃避」が意味を持つ場合もあるのがこの立場でのケースです。2つのサインは「現在の仕事を続けると、悪癖が身につく(と気づいた)」「職場が不健全な状態に陥っている」です。

「現在の仕事を続けると、悪癖が身につく」については、倫理にもとるというレベルまでではないものの、企業体質として、営業手法などでグレーゾーンをいとわない、顧客クレームを無視する、スケジュール管理がいい加減など、一般的な感覚では「ちょっとどうなの?」と思うようなスタンスの企業・組織風土があります。恐ろしいもので、こういう企業に所属し続けると、いつのまにかそれが自分にもしみついてしまうものです。そういう事態を避けるうえで、転職が現実味を帯びるわけです。

「職場が不健全な状態に陥っている」のほうは、そうしたグレーゾーンを突き抜けて、もはや一線を越えてしまっている状態です。もしかしたら、一昔前、ふた昔前であれば、「まあ、いたしかたないか」ということで済まされたこともあったかもしれません。しかし、今、これだけ社会性やコンプライアンスが問われる時代に、そうした体質の中で過ごすことは、自らのキャリアや生活面においてもリスクが大きいと思われます。

職場環境が理由で、特に人としての部分において、あなたが悪い方向に変わるようなことがあってはなりません。この部分だけは、絶対に我慢してはいけないところでしょう。一刻も早く、健全な職場への転出を図りましょう。

仕事において、なにか行き詰まりを感じたときに、まず見つめ直したいのは、自分が大切にしていることであり、自分の仕事上のテーマ(パーパス)です。これを見つめ直したときに、それが現在の会社、職場にないならば、それはあなたが転職を考えるべき明らかなサインです。

転職の成功には「正当な理由」が不可欠です。誰もが納得する、何よりも自分自身が納得できる転職理由を携えて、転職活動に臨んでください。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

井上和幸
 経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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