若手4人のモヤモヤからキリン大学 シニアも巻き込む
「企業内大学」のつくりかた vol.3 キリンアカデミア
リスキリング戦略
キリンアカデミアを立ち上げた若手4人の1人、田中さん
企業が社員のリスキリングを促す場として「企業内大学」を設置する事例が相次いでいる。変化の激しい時代に、社員が新たなスキルを習得する学びの場は、どのように運営されているのか。第3回は、キリングループの企業内大学「キリンアカデミア」を取り上げる。
キリンアカデミアの最大の特徴は会社主導ではなく、若手社員が自発的につくり、シニア社員や社外の人たちも巻き込み、成長したあくまで非公式の有志の集まりという点にある。新規事業創出やリスキリング支援の場として名門企業を変える原動力となっている。
キリンは何の会社、入社5年目が勉強会
「うちはいい会社だけど、何か物足りない」「モヤモヤするわ」。2019年1月、入社5年目の田中吉隆さんら若手社員4人は、独自に勉強会を立ち上げた。以前のキリンならビールの会社でよかったが、今は酒類から清涼飲料、医薬品、健康食品と多角化が進み、キリンは何の会社なのか、誰がどんな仕事をやっているのかも分からなくなってきた。気づけば、周囲の若手で辞める者も出ている。
「この会社の課題は何、もっといい組織にするにはどうしたらいい」と考えた4人の男女は、様々な部署のリーダーに聞き回った。くしくもこの年は、グループ再編など構造改革を進めたキリンホールディングスが新たなビジョンをまとめ、長期経営構想を発表する時期と重なっていた。
一昔前なら若手の話などに耳を傾けなかったリーダー陣も熱心に対話してくれるようになった。毎月イベントを開催し、多くの社員が集まった。
この4人は同期だが、部署はバラバラ、田中さんは経理担当で、他の3人は企画や広報などだった。これまでも社内で有志団体は存在したが、すぐに解散するケースが少なくなかった。そこでキリンアカデミアでは、開かれた組織づくりを目指すことにした。
大手企業はリスキリングが求められる中、次々会社主導の企業内大学を立ち上げているが、キリンはひと味違う。