資料が伝わらない 押さえるべきは「誰に」「何を」
【新任役員の苦悩】編 (2) 資料が社長に刺さらない
会社員社長1年目の教科書このように、自分の主張にどういった反論がありうるのかを想定しながら、文章を書かなくてはいけない。何が自分の論理の前提になっているのか、どこが推測なのかなど、論理をチェックをする視点を持つ必要があり、本書はそうして論理構築の方法も教えてくれる。
そしてもう一つ重要なのが、②曖昧な言葉を具体的にするという点だ。多義的な言葉で論理をつないでいくのはとても難しい。本書には練習問題が多く用意されており、論理に潜む曖昧な言葉を指摘できるかを試すことができる。一つ引用してみよう。
「日本文化は日本人にしか理解できない」
という主張を見てあなたはどう思うだろうか? 賛成/反対、どちらのスタンスをとるにしろ、そもそも「文化を理解するとはどういうことか」が、具体的に述べられなければ議論は収束しない。
例えば日本文化を理解することが、正座ができることならば、練習すれば多くの人ができそうだ。一方で、茶道ができることなのだとしたら、多くの日本国籍の人だって日本文化を理解していないことになるであろう。具体性がない中で議論を続けても、「文化は理解できる!」「いや、できない!」だけの応酬になってしまい、誰も説得はされない。
怪しい言葉ではデータの使いようがない
ビジネスの場面を思い出してほしい。エンゲージメント、ロイヤルティー、モチベーション……怪しい言葉はそこら中に転がっている。
あなたがもし、「価格を下げるべきだ、なぜならば、低価格の方が顧客のロイヤルティーが上がるからだ」と主張したら、その主張はきっと通りにくいであろう。ロイヤルティーの意味が分からないからだ。そもそもロイヤルティーが上がっているデータを見せようにも、なんのデータを見ていいかが分からないはずだ。
さて、あなたがどんなに部下を使って情報を集めても、誰に、何を言いたいのかを明確にしない限りは、きっと会議が終わらないことが分かったであろう。あなたは次の会議で何を伝えたいのだろうか?
