「なぜこんな新人?」、文句を言う人が知らない事情
技術者の働き方ホントの話セレクション通年採用にしたほうが意外に楽
このように採用活動は厳しい状況にありますが、悩んでいる企業に、筆者は次のようなアドバイスをすることにしています。
(1)通年採用としてルーティンにしてしまう
「12月に会社説明会を実施し、4月に面接、5月に内定」などのスケジュールを組んでいるなら、いっそこれをやめてしまうのも一つの方法です。
「当社は通年採用です。会社説明会は毎月第4金曜日の午後1時から。説明会終了後、希望者は面接を実施します」のように、毎月のルーティンにしてしまうのです。通年にするのは大変に思えますが、実際には業務を定型化しやすくなり、負荷を下げられる可能性があります。学生も説明会に参加しやすくなるため、採用のチャンスも広がります。年間に100人程度の採用であれば、この方法で問題なく対処できると思います。
大学も3月卒業だけでなく、9月卒業も増えてきました。多様性を重視する意味でも、入学月や卒業月が少し異なる学生を採用するのもよいでしょう。
(2)インターンシップを「ファンづくりの場」と考える
「インターンシップを実施したにもかかわらず、そこからなぜ採用できないのか」という文句はよく出てきます。そもそもインターンシップは本来、学生に就業体験の機会を与えるためのものです。インターンシップに学生がたくさん集まっても、その参加者が必ずしも自社に入社するとは限りません。
筆者は、インターンシップを「企業理解の場、ファンづくりの場」と捉えていました。参加者に自社を知ってもらい、ファンになってもらえばそれでよいと考えるのです。
一方で、参加者の友人に自社を宣伝してもらうことには力を入れていました。インターンシップに参加する学生は就職活動に対する意識が高い人が多く、他社のインターンシップにも参加しています。複数の企業の中から自社を選んでもらう必要があり、難易度は上がります。
ですから参加者1人に力を入れるよりも、参加者に自社のファンになってもらい、その友人3~5人に自社を宣伝してもらうことを重視していました。実際、これは採用に良い影響があったと感じています。
人事担当の方も、職場で参加学生を迎える方も、そのような意識でインターンシップに臨んでみてはいかがでしょうか。もし「インターンシップの参加学生をなぜ採用できないのか」と上長に責められたら、ぜひこのような説明をしてみてください。
(3)中途採用も新卒採用のプロセスに組み込む
中途採用を、新卒採用のプロセスに組み込む方法もあります。これによって採用活動を効率化しつつ、効果を高められる可能性があります。
特に会社説明会に代表される会社情報の提供は、企業理解・入社動機につながる重要なポイントです。本来は中途採用の対象者にこそ手厚く実施していただきたいところです。
中途採用の対象者にとっては、十分な情報を得たうえで自分に合っている企業かどうか見極められるメリットがあります。働きながらの転職活動は忙しく、会社や職種をろくに理解せず面接に臨み、本人・企業側ともに時間を無駄にしてしまうことも珍しくありません。わざわざ新卒・中途を分けず、採用活動を実施してみてはいかがでしょうか。
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。