27歳で上場企業取締役、エイジレス社会を目指し起業
キャリアコラム「老害」、年齢差別をなくすため起業
「若くてもやれる」を証明し、承認欲求が満たされた思いだった。しかし、「ゲーム事業が本当に自分の社会的なミッションなのか」と改めて自問自答した。「自分が存在することで社会が良くなったという世界をつくりたい」と起業を模索した。
「お金持ちの子」「若いくせに」というレッテル、一種の偏見に苦しめられながら、生きてきた。一方で高齢者も差別されていることに気づいた。人生100年時代と言われるが、「老害」という言葉は今も平気で使われる。日本人の平均寿命はドンドン上がっているが、大半の企業は60歳定年制を導入しており、キャリアがそこで終わる人も少なくない。
人材サービス分野では、転職市場は拡大しているが、60代以降のシニア市場向けのサービスはまだ少ない。ここに商機があり、社会的なミッションもあると確信した。マイネットで取締役2年務めた後、シニア向けキャリア支援事業を立ち上げた。
起業からまだ1年、早くも手応えを感じている。人材難の中、シニア人材を求める会社は増えている。ただ、マッチングには様々な課題がある。シニアになれば、視力など五感の機能は衰え、メールなどでも誤字・脱字が増えてくる。一方でシニアならではの知恵や経験を生かせる場面もある。
60代で年収1千万円のエンジニアも
「例えばデジタル領域では、若手人材は新しいソフト開発ばかりやりたがる。しかし、ベテランのエンジニアは、従来システムの保守管理をコツコツやれる人が少なくない。『COBOL』など昔のプログラミング言語で構築されたシステムの場合、シニアのエンジニアではなければ、対応できないケースもある」。
実際、60代で年収1千万円を確保したり、70代のエンジニアの転職などが次々実現しているという。
人間はレッテルを貼りがちだ。そこに人種や男女など様々な差別が生まれ、社会不安を招く遠因をつくる。小出さんは「ジェンダーレス、ボーダーレス、その次はエイジレス。年齢差別のない社会をつくりたい」と強調する。もはや〝桃屋の御曹司〟と呼ぶ人は周囲にはいない。レッテルを貼らない社会の実現に向けて突き進む考えだ。
(代慶達也)