東大にリケジョはあふれるか? 女性教員比は25%へ
ニューススクール
リケジョを支援している東大の山本則子教授
「たまたま東京に来なければ、東大には進学しなかったかも」と山本教授は振り返る。高校時代にホスピスなど医療分野に興味を持っていたが、地元の高校に進学していたら、教員や保護者は地元の国立大学の医学部を薦めていたかもしれない。いや、現在の地方の進学校の教員や保護者は、「東大より地元の国公立大医学部に行った方が親御さんも喜ぶぞ!」「女性は手に職、医師は高収入で社会的な地位もある」とアドバイスする方が主流だろう。
地方の進学校、東大よりも医学部志向強く
大阪市のど真ん中にある関西屈指の女子進学校、四天王寺高校。22年度の進学実績をみると、東大合格者はわずか1人だが、国公立大医学部医学科の合格者は計40人に上る。京阪神の国公立大医学部は難易度で東大の理1や理2とほぼ同水準だ。四天王寺から東大理3、医学部に進学した上田彩瑛さんは「東大は物理的にも精神的にも遠い学校。ウチの女子校は圧倒的な地元の医学部志向」という。〝東大より医学部〟という志向は男子よりも女子の方が強くなっている。
九州の女子校から東大を卒業した40代の女性は、「地方出身の女子は、東大に入学したらまず孤立します。開成や灘など男子校の出身者が多く、女子も桜蔭など限られた首都圏の高校の卒業生が占めているので、居場所を失ってしまう」と振り返る。特にコロナ下では一段と厳しい環境となった。20年春、青森県むつ市の公立高校から30年ぶりに東大の理2に合格した大塚小麦さんは「いきなりオンライン授業で学生になった実感もわかなかった」という。
東大は依然として男社会と言えそうだ。しかも女子学生以上に女性教員の比率は低く、22年時点で約17%と、国公立大の中でも低い水準にある。一方、OECDの調査によると、大学など高等教育機関の女性教員比率は加盟国の平均で45%、米国は51%と半数を超える。欧米では、ダイバーシティではない教育・研究機関は淘汰されると言われるが、東大は多様性の危機に直面しているのだ。