男性育休、管理職の葛藤「希望通りに」と言いたいが…
ダイバーシティBさん 「人が欠ける事態になったときは、コア業務を洗い出し、やらなくていいものは捨てている。そのためには、部下とコミュニケーションを密にすることが重要。男性社員に対しては、パートナーが妊娠した際、できるだけ早めに申告してもらうようにしている。そうすれば育休を取得するまで時間があるので、業務を整理できる」

Aさん 「男性育休を同僚に理解してもらうことは大事。自然に任せるのではなく仕掛けていかなければいけない。例えば社員に普段から有休を積極的にとらせ、その間、自分の仕事を他の人にやってもらったりすることで支え合う。協力的な部分を日ごろから評価するようにしている」
Cさん 「僕自身は第2子が生まれたとき、当時のボスに『気の済むまで休みなさい』と言われ『こういう部署で働くっていいな』と思った。働きやすい職場には結果的に人が集まる」
「一方で、育休をとった男性従業員から『(家事育児が)意外につらかった』という話を聞いた。彼は1カ月の育休だったが『1カ月で仕事に戻れてよかった』とも。育休を仕事と家庭の両立に生かすためには、家庭内ですることを、育休前にきちんと決めておいた方が良い」
Aさん 「悩ましいのは、育休含め社員のワークライフバランスを全て考慮することが、本当に会社の利益につながるのか、ということ。(長期間休むことで)個人の能力が落ちてしまうのではと思うこともある。会社全体で利益を落とさず、選択肢をできるだけ多く作る方法をうまく調整していきたい」
Cさん 「今は、育休制度という種をまいたが、水やりができていない状態。トップの理解はあっても、その下の管理職がブレーキになっているという課題もある。意識を変えられるよう、じっくり話していくしかない」
取得後のフォローも重要
育休取得後の働き方のフォローも、企業の課題だ。アンケートでは、復帰後の男性社員のワークライフバランスについて「重視されている」「まあまあ重視されている」と答えた人は63%に上った。一方、「定時帰宅を貫いた社員が役職を外された」「女性社員に対しては復帰後の制度が用意されているが、男性にはない」といった厳しい現状も少なくないようだ。
NPO法人ファザーリング・ジャパンの塚越学理事は「男性育休は働き方改革に向けた試金石。今までのやり方を抜本的に変えないと進まない」と指摘。「経営側は社員の意識変革のみならず、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める、研修制度を拡充する、といった取り組みで管理職を後押しし、社員の行動変容を促す必要がある」と話す。
(堀部遥)