変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

本書は若者に限らず、あらゆる年代の人々に向けて書いている。こうした問題(編集部注・世界に関する知識が基本的にはほとんどない若者が増えている)に関心を持たずに大学を出て、社会で年齢を重ねてしまった大人は少なくない。学んだけれど大半を忘れたという場合もあるだろう。何より、私と同世代の人たちが数十年前に学んだ知識は、今ではかなり不十分または不適当なものになっている。歴史はここ数年で大幅に解明が進んだ。私が育った1950年代から1960年代には、冷戦は永続的なものだと認識され、実際に第二次世界大戦後の40年間を冷戦が成り立たせてきた。しかしその関係は終わり、ソ連も崩壊した。かわって世界の大国となったのが中国だ。そしてインターネットから人工知能、気候変動に至るまで、かつては存在しなかった新しいテクノロジーと新しい問題が生まれている。教育は若いうちに受けて、20代前半から半ばあたりで学び終え、その後の50年間を生きていく……という考え方は捨てるべき時代が来ているのだ。高速道路のような人生を進まねばならない現代の私たちは、知識の水槽につねに水を注ぎ足していく必要がある。
(まえがき 17~18ページ)

対策に足並みがそろわない気候変動問題

気候変動を例に挙げても、こうした地球規模で対応を迫られている諸課題についてどのように臨むべきか。二酸化炭素(CO2)をはじめ温暖化ガスの排出削減目標を打ち出した2015年のパリ協定を、トランプ政権下の米国が離脱するなど、先行きは不透明感を増しています。米国の離脱について、著者の見方は悲観的です。「世界第2位の炭素排出国が気候変動の解決にどう取り組むつもりなのか、疑問が生じている」(249ページ)。「気候変動は今後ますます深刻になり、制限や阻止を試みる国際的取り組みではおそらく追いつかないと考えられる」(同)との展望を示しています。

著者の見方は、温暖化ガス排出削減のためのテクノロジーの進歩に望みを託します。本来は各国が協調してこうした技術の進歩に向けて動き出さないといけないはずなのに、覇権争いを続ける米中関係、地政学的な対立が浮き彫りになった米ロ関係など、足並みがそろわない。

ここに、冷戦後、さらにグローバル化が進み、複雑に入り組んだ国際関係の難しさを指摘します。

世界のエネルギー使用状況を転換する技術革命がまだ登場していないことを考えれば、気候変動が世界にもたらすインパクトについて、私たちは憂慮するべきであり、不安を感じるべきとも言える。これはまさしく世界的危機にほかならず、一国が自力で解決することはできないし、自国だけは影響を受けないよう身を守ることもできない。しかし、必要とされている集団的対策行動が実行される可能性もかなり低いようだ。だとすれば、今世紀は「気候変動」の一言で語られる時代となっていくのかもしれない。
(第3部 グローバル時代 気候変動 250~251ページ)

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